飲ませてください、もう少し

猫の居酒屋

 猫が猫を呼び、おやつを食べに来る猫の数は増殖の一途を辿り、我が家の家計をひっ迫している。片手で暖簾を掻き分けて「おっちゃん、まだやってる?」と、まるで居酒屋にふらっと立ち寄る金曜のサラリーマンの如く奴らはやってくる。思わず、「ああ、やってるよ。そこへ座りな」と言う俺。門戸は広い。
 俺のスマホはストレージが小さく、アプリの取捨選択に苦慮している。docomoが悲鳴を上げようと、とりあえず「LINE」は全人類インストール必須だよな、とか思う。着信音はシド・ヴィシャスマイ・ウェイauのcmで一躍脚光を浴びた曲なだけに、「あれ? 腹さんauだっけ?」なんて素っ頓狂な質問する輩もいるかも知れない。そのときはこう言ってやるんだ。「ふざけろよ、俺は10年以上docomoユーザーだし、シドのマイ・ウェイに至っては15年も愛聴し続けているんだ糞野郎」と。
 …この眼が、二つだけで良かったなあ。世界の悲しみがすべて見えてしまったら、僕は到底、生きていけはしないから。うまいことできた世界だ、いやになるほど