モテキ

モテキ

 「"草食系男子"なんて言うと聞こえはいいが、要は、去勢された雄犬ってことだ」とは、テレビドラマ版モテキの中で、リンダこと林田尚子の台詞である。
 最近、TSUTAYAへあしげく通っていて、映画の評判が良いモテキのドラマ版をレンタルして見たんだけど、すこぶる面白い。異性に興味を持ち始めた頃の思春期の男性の悶々とした気持ちがリアルに表現されているから主人公に感情移入でき、また、森山未來の煮え切らない演技がそれに見事にハマっている。主人公を取り巻く女性もそれぞれに背景と個性がはっきりして、どれも魅力的で、なかなか一人に絞れない気持ちもわかる。
 土井亜紀を演じる野波真帆は、ルックスからすればもっと売れて良い女優だと前から思っていたが、この作品では持ち味が存分に発揮されている。もし芸能界に田中麗奈が存在しなければ、野波真帆が田中麗奈のポジションに行けたんじゃないかと思う。
 ことあるごとに"演技派"と言われる満島ひかり(中柴いつか役)の存在は、この作品でも光っている。キレたときの満島ひかりの演技には目を見張るものがあるが、他の役を演じても同じキャラに見えてしまって、満島ひかりは結局満島ひかりなんだな、と思った。キレた満島ひかりは、"演技"というより"キレ芸"と言っても過言ではない。
 この作品が面白いと思える理由はもう一つあって、それは音楽のセンスである。主人公と土井亜紀がフェスに行くきっかけになったのは東京ナンバーワンソウルセットのTシャツだし、主人公のケータイの待ち受けはスチャダラパー。他にも、電気グルーヴ岡村靖幸小沢健二ホフディランバービーボーイズ、パフューム、サカナクション真心ブラザーズなど、どれも「あっ!」と思わず嬉しくて声を上げてしまうような選曲のオンパレード。主題歌の夜明けのBEAT(フジファブリック)のチョイスも秀逸だ。映画版も見てみたいが、DVD化されてからか。
 人生には、必ずモテ期が3度来ると聞いているが、俺のモテ期はというと、小学校高学年ぐらいから断続的に何度かあったような気もするし、あの頃から連続して今も継続中という気もする。こんな風に、家に籠ってしこしこブログを書くさまも、モテキの主人公に近いものがある。
 …悲しいほど道を描いてゆく。ほんの少しの夢を見て、満たされてるんだ。そんな幻想など、とっくに風の歌