全国各地が、私の縄張り

KISS(ジーンシ・モンズ)

 大宮で、ユニコーンのアリーナツアーを見た。
 黒ひげ危機一発を模して、ギタリストが飛ぶ演出から始まり、ワイヤーアクションでメンバーが宙を舞い、「オレンヂジュース」では、ステージに炎が上がりまくる。演出だけで言えば、KISS(画像)のようだった。アンコールでは質問コーナーみたいなものも設けられ、歓声と笑いがアリーナ中に渦巻いている。ショウとしては最高に楽しいものだったが、マジモードに入った時の凄味は、脂の乗り切ったミュージシャンそのものである。ごく初期の曲、Maybe Blueを久々に披露したが、動きの多い初期のユニコーンと違って、どっしり腰を落として歌う民生が印象的だった。オーディエンスの中に、英国人と思しき男性の姿があった。レディオヘッドのシットダウン・スタンドアップにそっくりの「オレンヂジュース」や、オアシスのドント・ルック・バック・イン・アンガーにそっくりの「晴天ナリ」を、ロックの本場から来た英国人はどんな思いで聞いたのか。
 コンサートに行きまくってるおかげで、家には金が全然ない。
 …旅立つこの有様で、片手にはヘミングウェイ。太陽と月に吠える喉を、折れた牙を