奥州漫遊記

狛犬

 なでしこジャパンの快挙は単純に喜ばしいが、選手たちが連日、テレビ局に引き摺り回されて気の毒になる。澤と岩清水の顔も見飽きたところで、岩手県へ旅立った。
 まずは小岩井牧場まきば園。標高が高く、見晴らしが良い。もともと田舎に住んでいるが、俺の地元は中途半端に田舎なので面白みがない。岩手は筋金入りの田舎なので、ちょっと山のほうへ行けばいきなり絶景が広がっている。昼はジンギスカン。屋外で食べるジンギスカンは、味も5割増しぐらいに感じる。木の幹には、今まさにセミがさなぎから飛び立たんとしている。人間にガン見されているのに、呑気に羽化しようとしているのだ。あんなの生で見たの、生まれて初めてだ。
 続いて、珍しい狛犬(画像)がいるという盛岡天満宮へ。なるほど、怖い顔で神仏を守護する一般的な狛犬とは一線を画している。達観した余裕の表情なのかなんなのか、とにかく可愛らしい。
 夜は、焼肉と盛岡冷麺。赴いた土地で、そこの名物を食するのはたまらなく旨い。雫石に、夜の帳が静かに降りる。
 …冬が来るなんて忘れていた。なんの準備もできちゃいないが、信号の赤が時間を稼いでいる