え? あんた誰?

植木等

 昨日までの9日間連続出勤を無事に勤め終え、安堵の胸を撫で下ろしているところである。隣の席のへの字口の男が言うには、昔よく遊んだ同僚はバレーボールをやっていて、女性の割にずいぶん大柄で、足の文数も大きく、への字口の男の靴の上からその女性の靴を履けるほどだとか、そんな話を聞かされた日には精神を病みそうになった。
 CDの音源をケータイの着メロにする方法を会得したので、いろいろ試している。メールの着信音は、谷啓の「え? あんた誰?」という有名なフレーズ。先日、本社からお偉方衆がぞろぞろやってきて、ちょうど俺の席のそばを通りかけたタイミングで、マナーモードにしていない俺のケータイが「え? あんた誰?」と喋った。まるで、お偉方衆を揶揄するかのような谷啓の「え? あんた誰?」はなかなか痛快だった。そんなタイミングで俺のケータイの着メロを鳴らすのは、たいてい"二本松のズラタン・イブラヒモビッチ"なのだ。
 新居の風呂は快適で、朝も晩も風呂に浸かっている。O.P.KINGの「夢のリーゼント」という曲の「車も無ぇ、バイクも無ぇ、ウッドベースも無ぇ」という一節が死ぬほど気に入ったので、それを口ずさみながら、ご機嫌に湯船に浸かるのが日課となっている。
 口を開けばというか、ブログを書き出したら毛皮のマリーズの話だが、彼らの愛や平和に対する前向きさには、この世のものとは思えぬ純粋さを感じる。音楽を聴いてこれほどポジティブな気持ちになれたのは、植木等(画像)のスーダラ節とか、小沢健二のLIFE以来のことだ。
 …黄金を抱いて遠くへ運ぶ。その重さがやがて、この腰を曲げてしまうまで、何を賭して歩く