完全無欠のAVシステム

BOSE

 年内の出勤は今日で最後。隣の席のへの字口の男は、出勤するなりいきなり「じゃ、今年も一年お世話になりました」と言いながら退勤する素振りを見せる。への字口の男流のギャグなのだろう。この人たぶん、毎年同じことやってるんだろうなあと思っているうちに、「いやいやいやいや」と誰かから社交辞令的なツッコミが入る。このギャグ、今日だけで3回は見せられた。2回目は頑張って愛想笑いを浮かべるも、3回目にはさすがにイラッとキた。
 煙草でもふかしていたのだろう。への字口の男は大掃除の時間に少し遅れてやってきた。そして、まだ掃除をしていない壁を見て「あら、白くなっただっぺ。見違えただっぺ」と白々しく適当な美辞麗句を並べ「そこまだ掃除してねーよっ!」と叱責されていた。この性格は来年も治るまい。
 退勤時刻を見計らい、店長の席から順に年末のあいさつを済ます。若い衆の席では「腹さん、一年間、職場のファッションリーダーをお疲れ様でした。来年も引き続き、ファッションをリードしていってください」などと言われる。俺は本当はもっとこう、ジギー・スターダストの頃のデヴィッド・ボウイみたいにギリギリのところまで登りつめてみたいんだ。
 BOSEのCINEMATE(画像)を設置した。テレビの両サイドに一対と、テレビ台の左にウーファー。2.1chなので、パッと見、大仰なセットではないが、はっきり言って、ヘタな映画館より音響が良いんじゃないかと思う。クィーンのボヘミアン・ラプソディを流してみた。ブライアン・メイのクリアなギターサウンドは臨場感グンバツだし、すぐ傍にフレディがいるかのようなド迫力が味わえる。というか、自分がフレディになったかのような錯覚にすら陥るほどである。余談だが、イギリスで「英国史上最高のシングル曲は何か」というアンケートをとったところ、ビートルズらを抑えて1位に輝いたのが、ボヘミアン・ラプソディである。
 …未だに離れないよ、すべて。うるわしい首筋の匂いも、懐かしいあの日の残像も、君の涙も、僕を呼ぶ声も、未だ