フライングダッチマン

渡辺えりと玉山鉄二

 松井大輔長友佑都大久保嘉人…。先のオランダ戦で良い動きをした選手は、不思議と九州の強豪校出身者が多い。敗れはしたが、見どころの多いエキサイティングなゲームだった。カメルーン戦が、日本サッカー史上最も醜い勝利だったとすれば、オランダ戦は、日本サッカー史の中で最も感動的な敗北である。
 決勝トーナメント行きをさっさと決めたいオランダが序盤からものすごい猛攻を仕掛けるが、日本の組織的な守備が機能して得点を許さない。日本の最初の見せ場であり、この試合の大きなポイントとなるシーンが前半11分に訪れる。松井の縦パスを長友がダイレクトシュートするシーンである。シュートは外れたが、日本の左サイドからの攻撃がオランダの選手の脳裏に焼きつき、以後、長友を警戒したオランダの右サイドは、攻撃参加の回数が極端に減ってしまう。長友のたった一本のシュートが、オランダ攻撃陣の抑止力となったのだ。それでも圧倒的なボールポゼッションで中盤と左サイドから攻撃を仕掛けるオランダは、ついにスナイデルのシュートで日本のゴールマウスをこじ開けることに成功する。1点のビハインドを背負ってからの日本は、人が変わったように積極的にオランダゴールに向かうが、最後まで得点することはなかった。
 しかし、前から岡田監督の選手交替は不可解な点が多かったが、今回の試合はさらに輪をかけて不可解だった。最も躍動していた松井大輔を真っ先に下げ、走れず守れずプレスも効かない中村俊輔を投入する。中村俊輔は明らかに最後まで浮いた存在だった。続いて、激しいチェイシングでオランダの攻撃の芽をことごとく摘んでいた長谷部誠と、生涯最高のパフォーマンスでシュートもたくさん打っていた大久保嘉人の二人を同時に下げて、アジアレベルでしか通用しない岡崎慎司とアジアレベルでも通用しない玉田圭司を投入してしまう。個人的には、本田圭佑をベンチに下げて森本貴幸を投入するという采配がセオリーだったと思う。
 今クール、質の良いドラマが割りと多いが、W杯のおかげで話題にも上らない。中でも、異彩を放っているのは北川悦吏子脚本の「素直になれなくて」か。ツイッターをドラマに取り入れたと言うわりに、それほどツイッターは登場しない。しかし、編集長役の渡辺えりとライター役の玉山鉄二が序盤で見せたラブシーン(画像)は、昨今のドラマで最もセンセーショナルな場面だった。俺、悪寒がしたもの。
 …死んだものだけが持つ特別な娯楽価値。特に迷わずに呑み込んでしまおう。瞬間に区切りつけてくれるベルの音。止めてしまわずに、耳を澄ませ