ブブゼラ

琴光喜関

 琴光喜野球賭博に関与していたことを認めたことにより、角界暴力団の癒着ぶりもいよいよ明るみに出てきそうだ。角界追放としてもおかしくない事案かと思いきや、相撲協会は、警視庁の捜査を結果を待って処分を検討したいと言っている。これでは、デーモン小暮閣下が嘆くのも、やくみつるが怒るのも頷ける。相撲の世界は、とことん身内に甘い体質である。しかし、カメラの前で賭博を認め、謝罪していたが、琴光喜の顔って普通にしていても半笑いしているかのように見えてしまう(画像)。こういうシチュエーションでは損な顔である。
 いよいよW杯が開幕した。俺の予想が当てはまらなかったことがこれまで二つ。一つは、ダークホースと目していたセルビアが初戦でガーナにコロッと負けたこと。もう一つは、韓国がすごく良いチームに仕上がっていたこと。あとついでに、「ブブゼラ」と言う南アフリカ独自の応援グッズ(楽器)がやたらとやかましい。
 土曜日は"鉄男の保護者"と呼ばれる人がちょうど東京から泊まりにきたので、プレミアム焼酎「魔王」を飲みながらアルゼンチンvsナイジェリアをテレビ観戦したんだけれど、それはそれは至福の時間だった。前評判が低いアルゼンチンだが、言うほど悪くは見えなかった。チームをコントロールするベロンと、バイタルエリアを縦横無尽に走り回るテベスが印象的だった。それよりも強烈に印象に残ったのは、まん丸い体のマラドーナ監督である。何度もカメラに抜かれていたが、シュートをはずしたときやチャンスを逸したときに見せるオーバーアクションはユニークそのもので、腹を抱えて笑ってしまった。ただし、時折テクニカルエリアに転がってきたボールを足で捌く様子はさすがマラドーナである。扱い方がすごく巧い。足なのに、手で掴んでいるみたいにソフトだった。
 オランダ対カメルーン戦を解説していた名良橋晃は、舌が寸足らずである。「…けどねえ」が「…けろねえ」に聞こえる。それから「ロッペン、ロッペン」と言う奴には心の中でこう言っている。「ロッペンじゃなくてロッベンだ!!」。
 日本対カメルーンについては、テレビをつけたまま眠ってしまうという大失態。目が醒めたら本田圭佑がインタビューされていた。まあいいか、勝ったんだし。しかし、「ゼロトップ」というまさかのフォーメーションを採用するとは恐れ入った。勝つには勝ったけれど、やはり本田圭佑の前には森本を置いたほうが断然良い。"岡田監督、采配的中"なんて書いた新聞記者はあまりに単細胞だ。初戦で勝ち点3を手にしたチームのうち、8割は決勝トーナメントに進んでいるというデータがあるらしい。混迷を続けた数々の親善試合は、カメルーン戦へのフラグだったのか。カメルーン戦ですら、目標とする「ベスト4」へのフラグなのか。少なくとも、あと2戦は日本代表のサッカーを楽しむことができる。
 この試合をオシム氏は旧約聖書になぞらえて、個の力で勝るカメルーンを"巨人ゴリアテ"、組織で立ち向かう日本を"羊飼いの少年ダビデ"と比喩している。現代サッカーの潮流は、ますます個人技から組織プレーへ移ろいでおり、かのセレソン(ブラジル代表の愛称)ですら、ドゥンガが監督に就任してから組織的なチームに変貌を遂げたほどだ。一部から「守備的でつまらない」と批判される今のブラジルだが、「前線には素晴らしい2トップがいるし、中盤は創造性が豊かである。サイドバックは絶え間なく攻撃参加するし、かといって守備を捨てているわけでもない。あなたにとって面白いサッカーとは何かね?」と少しムッとしてカカは言う。
 俺の会社には親方の上に大親方がいて、大親方は、日本ダービーが終わった後に「俺はエイシンフラッシュ単勝は買ってただっぺ。だめだよ、ああいう馬は買わなきゃ」と大きな声で言ったり、試合が終わってから「俺はカメルーンには勝つと最初から思ってただっぺ」となんてやはり大声で言うのだ。仕事のことも何かと大声で大騒ぎする大親方のことを、俺は心の中で「ブブゼラ」と呼んでいる。本物のブブゼラは選手を応援するために吹くが、大親方がブブゼラを吹くのは、主に己れの保身のためである。
 …まるでくだらない僕のコレクション。例えばそれを全て捨てても、まるで変わらない、僕のクエスチョン。まだ雲を待つだろう