流れる水は同じ水にあらず

板野友美(AKB48)

 AKB48の勢いたるや、今やハロー!プロジェクトを完全に逆転したと見て良い。"総選挙"と呼ばれる人気投票は、ファンならずとも大きな関心を集めている。龍馬伝にも出演中の前田敦子が1位と予想されているが、俺としては篠田麻里子板野友美(画像)あたりを応援したい。これ、下手したら夏の参院選よりも世間の関心が高いんじゃないだろうか。おニャン子クラブの時代から、秋元康にはやられっぱなしだよまったく。
 通称"八山田のディディエ・ドログバ"が、苦そうな顔とシブい仕草で、たらこスパゲッティを喰い終わった後、店の一番人気メニューを知っているかと聞いたら知らないと言うので、それがミラノ風ドリアであることを静かに告げた。すると「腹ちょ! そういうことは注文する前に言ってくれよ!!」と珍しく激昂していた。この日、彼のテンションが最も高まった瞬間である。日本の首相が誰かは知らなくても、サイゼリアの1番人気がミラノ風ドリアだってことは誰でも知っていると思っていた。
 岡田監督が犬飼会長に進退を伺ったそうだが、このタイミングで監督を交代させるのは、無能の監督を続投させるよりもリスクが高い。オシムの遺産を使い切ってしまった今の日本代表にちらつく「三敗」の二文字。どうしてもこの時期に監督を代えたいって言うなら、後任は生島ヒロシぐらいしかいないんじゃないの。
 ヘヴィメタル界の北島三郎こと、ロニー・ジェイムス・ディオが亡くなった。ブラックサバスに加入したり、自らDIOというバンドを組んだりしていたが、やはりロニーと言えばRAINBOW。RAINBOWの1stアルバムのリリースは、たしか俺の生まれた年である。数十年の間、録音技術は目ざましい進化を遂げたが、歌そのものは一定以上のレベルになるとごまかしがきかないから、エネルギッシュで伸びやかなロニーの歌声は今もなお色褪せない。後年、ドゥギー・ホワイトというボーカリストを迎えてRAINBOW名義でアルバムを作ったことがあった。曲も良いし、リッチー・ブラックモアのギターもツボを押さえていて良いアルバムだった。ドゥギーのことも、なかなか良いボーカリストじゃないか、と思っていたが、ロニーと較べてしまうと、やはりロニーだけは特別な存在だとわかる。そのアルバムで、もしロニーがボーカルを取っていたらロック史に残る名盤になっていたと思う。
 RAINBOW黄金期のメンバーのうち、コージー・パウエルも事故で死んじゃったし、ロニーも今般胃がんで逝去した。残ったリッチー・ブラックモアは健在だが、妻で元バドガールのキャンディス・ナイトに熱を上げ、中世音楽みたいなものに没頭している。おまけに、明らかに人工的に増毛しているのに「規則正しい生活の賜物だ」と主張してきかない。クレイジー・キャッツも同様、ハナ肇が亡くなり、植木等も亡くなり、かつて日本きってのトロンボーン奏者と言われた谷啓は健在だが、メディアでお見かけすることもめっきり少なくなった。流れる水は同じ水にあらず…。時代は、AKB48Perfumeにシフトしつつある。
 転勤してからもうすぐふた月が経つが、まだ地に足は着かず、定時で帰った試しはない。ズボラでものぐさなイメージのある俺だが、本質的にはとても正当的でオーソドックスな仕事をするタイプである。理に適わない仕事はしたくないし、結果と同じぐらい経過に重きを置きたいのだ。だから時間をかけて、じっくり畑を耕している。
 隣の席のへの字口の男性は、仕事でラジオ出演した際、原稿と違うことをべらべら喋ったら、後で上司に叱られたなどと得意気に語っていた。また、50歳前後が集まる研修施設で女性の下着が紛失して騒ぎになり、犯人探しが行なわれたが「『はい、私が取りました』なんて言う訳ないだっぺ!」などとげらげら笑いながら喋っていた。今日は、どこぞの誰かと電話(ビジネス的な内容のもの)でしゃべった後「え?わたし?名前ですか?キムタクと言います。ひゃひゃひゃひゃひゃ!」と俺の耳が節穴じゃなければ確かにそう言っていた。
 …数え切れない数をただ数えて、誰かの言葉に舌を鳴らしてさ、だらしなく流れるスピーカーの音を止めてしまおうよ。廻るものを全て