こまっしゃくれたフレンチ・プードル

tetsuo_hara2010-03-08

 ブライトリングをオーバーホールに出したのは、もう1週間以上も前になるのか。たかが腕時計とは言え、ブライトリングクラスになると待遇も凄まじく良い。商談スペースに通され、表面にきめ細かい泡が立ったコーヒーを出される。珍しいですね、格好良いですね、と俺の時計をさんざん褒めたあと、「こんなのもありますので、ぜひ」と、こまっしゃくれた顔の店員が白い手袋を嵌めて新シリーズを持ってくる。手続きが済んで、ついでだから店内を見て回っていると、俺の後ろには常に1人か2人スタッフが付いて、ああでもないこうでもないと商品の説明を一生懸命する。危うく、もう2、3本買っちまうところだった。
 ブライトリングのムーヴメントは、IWCパネライやオメガと同じくエタ社のものを載せているが、新シリーズのクロノマットB01(画像)というモデルで初の自社ムーヴメントを搭載している。エタ社のムーヴメントの稼働時間が48時間なのに対し、自社ムーヴメントは72時間の稼動を実現させている。さらに、従前のモデルは最低でも5年に一度はオーバーホールを必要としたが、自社ムーヴメントの場合は10年に一度で良い。よって、メンテナンスのコストも低く抑えられる。食指が動きかけたが、他のモデルを見渡しても俺のクロノマットより格好良いモデルなんてないことに気付くまでに、そう時間はかからなかった。
 通称"八山田のディディエ・ドログバ"が珍しく電話をかけてきて、季節ごとに飲み会をやると金がもたないから、少し回数を減らさないかと提案してきた。10年前は、勝新太郎が銀座で豪遊するかの如く郡山の駅前を我が物顔で歩き、ホルモニックな魅力を放ちながら札束をばら撒いていた男が随分セコいことを言い出したもんだ。
 それから、以前ブログに、彼の髪の毛が化石化して後世発見せれたらどうなるか書いたことを持ち出して、「あんなこと書きやがって」と怒るので、そんなのお前が悪いんだろって言い返してやった。
 ケータイの進化に反比例して、彼のメールの頻度は減少傾向にある。彼はナマズの珍種みたいなものだ。先日、珍しくメールを連投してきて、一体何の前触れかと思ったら、ほらみてごらん、チリで大地震が起こったから。
 …あらかじめわかっているさ。意味なんてどこにも無いさ。11の嘘と本当。見えないふりでもするのだろう