珍奇男

tetsuo_hara2009-11-05

 しかし、空っぽの冷蔵庫開けて、いろいろ思い出してると、棚倉の暮らしはやけに喉が渇いてしまう。
 東北楽天のCS進出の興奮が醒めやめらぬうちに仙台へ買い物へ行った。楽天は敗れてしまったが、街のあちこちから余韻を感じ取ることができる。おかげで15,750円のラバーソールを半額で買えたりして、野村克也さまさまだと思った。
 仙台で衝撃的だったのは、リアルな馬の面(画像)をかぶった人間がアーケードを闊歩していたこと。テレビ番組の撮影でもなんでもない。単なる愉快犯か。あ、なんかヤバそう、と妙な胸騒ぎがして目で追っていた。信号のところで盲導犬協会がキャンペーンを行なっていて、小学校にあがるかあがらないかぐらいの男の子が、道行く人に犬のシールを配っていて俺ももらったりしたのだが、その小学生が「はい、どうぞ」と、こともあろうか馬の面にまでシールを配ろうとした。そうしたら、馬の面は立ち止まって丁寧に受け取り、男の子に会釈までしていた。馬の面をかぶってはいるが、中身はいい人に違いない。俺の胸騒ぎは杞憂に終わった。仙台には変わり者が多いとは思っていたが、かなりの珍奇男である。
 先日、ダイノジのラジオを聴いていたら、B'zを再考するという企画をやっていた。ダイノジと言えばエアギター世界チャンピオンの大地洋輔の印象のほうが強いが、大谷ノブ彦の音楽通ぶりはハンパではない。洋楽ファンや生粋のハードロックファンから嘲笑されがちなB'zを救済しようという内容だが、レッド・ツェッペリンAC/DCを引き合いに出したり、楽曲が構築されるまでの様子を予測したり、歌詞の独自解釈を展開したり、音楽評論家以上に見事に論じていた。お笑い芸人ダイノジの番組なのに、笑いの要素はほとんどなく、ただ延々と1時間のB'z談議である。思わず最後まで聴き入ってしまい、B'zに対して否定ではなく許容という感情が芽生えた。でも、B'zとB'zのファンの方って、この世で五指に入るぐらいダサい人種だと思っちゃうわけなんですよ。
 仕事をしながらでは、風邪を治すのにも時間がかかる。かぜ薬がなくなる前日に再び通院。喉の痛みが治まったかわりに、鼻水や咳の症状が出ていたので、違う種類の薬を処方してもらう。その気はなかったのだが「どうします?今日も一発やっていきますか?」と医師に言われる。"イッパツヤッテイキマスカ"という言い回しに一瞬躊躇して、「お、お願いします」と言うと「ぐへへへ」と医師が笑って、看護師が点滴の準備をはじめる。おかげで体は楽になり、今日に至る。特筆すべきは、俺と医師とのやりとりの中で「点滴」という言葉が一度も使われなかったことだ。この医師も珍奇男と言える。
 11月に入った途端に降雪に見舞われたら、職場のプロゴルファー猿みたいな顔をした男が昔話をはじめた。高校生のとき、マラソン大会の日に雪が降ったことを鮮烈に記憶しているらしい。生物部だったから理科室を自由に使えるのをいいことに、ビーカーでお湯を沸かしてコーヒーやお茶を飲んだり、カップ麺を食べたりしたそうだ。無論、プロゴルファー猿みたいな顔をした男の話にオチはない。この男が明らかに人より変わっているのは、そのときのビーカーに体とか脳に悪い薬品が入っていて、それを体内に取り込んでしまったせいなんじゃないかと思ったら可笑しくなった。この男、そのぐらい珍奇男なのだ。
 年末は、俺の仕事の正念場である。別の支店で俺と同じ仕事をしている担当者は俺よりベテランで、明らかに俺よりも慣れているし知識も相当ある。なのに、この仕事のために夜中の2時まで残業しているそうだ。それに引き換え、毎日定時に退勤する俺。我武者羅にやっても結果はそれほど変わらないのだ、俺の場合は。
…御免! 内藤新宿武家屋敷。お犬様でも寝てござる。天下泰平江戸の世に、悪の徒花咲かせよか。むくろ影射す、おぼろ月夜に、唄を吟えば、詠!詠!詠!