テレビヨシ、アンテナヨシ

 日本のヒップホップの始祖と言っても過言ではないスチャダラパーのアルバムは、俺にとってもはや、単なる音楽作品というより人生を戦い抜くための五輪書のようなものである。そのスチャダラパーが、通算11作目の、その名も「11」というアルバムをリリースした。以前、自身のブログでBOSE先生が地上波アナログ放送終了までまだ2年以上あるのに、画面右上に「アナログ」と表示されることについて憤慨していたが、俺も総務省の地デジ政策について懐疑的に思う中のひとりである。今回のアルバムでも「Vからベータ、エイトからレーザー、メガからテラ、フィルムからデータ、順に従うけなげなユーザー」とか「買って買って、社会に貢献」とか「替えて替えて、お国を再建」とか「あら?あら?いいですね、財布と地球にやさしいですね」などと痛烈なリリックで皮肉っている。さらにあのCMの「アンテナヨシ、テレビヨシ」のフレーズまでサンプリングする始末。
 その「アンテナヨシ、テレビヨシ」のイメージキャラクターがアルコールで失敗を犯して逮捕され、日本中が揺れている。かつてSMAPでは稲垣吾郎が逮捕され、ブラウン管からしばらく消えていた時期があった。稲垣メンバーの場合はテレビ番組「SMAP×SMAP」の中で、これ以上ない演出で華麗なるTV復帰を遂げたわけだが、その復活劇を演出したのが、森三中大島美幸の夫でもある凄腕プロデューサーの鈴木おさむである。過剰でなく嫌味でもなく、ほどほどに厳かな復活劇については、「鈴木おさむは良い仕事をした」だとか「さすが鈴木おさむだ」など、関係者から大絶賛を浴びるほどだった。その後の稲垣吾郎が自然にSMAPメンバーに溶け込めたのも鈴木おさむありきと言える。
 事件が起こったばかりで復帰のことを語るのは時期尚早だが、草なぎ容疑者の復活劇を鈴木おさむがどう演出するか、その手腕にぜひ注目したい。
 …いつだってここは昼過ぎのまま。そのペースで耳の傍をかすめたそれは、また僕をくすぐった