ハンサムスーツ

 通常は、退勤時間になると、石を打たれて散開する岩魚のように一斉に会社から人が掃けてゆくが、今の時期はそうはいかない。今日もあくびを呑み込みながら夜中まで書類をひっくり返したりしてきたところである。
 "天才少女"や"女版ディープインパクト"などと呼ばれるブエナビスタだが、桜花賞を制したことでその評価が不動のものになりつつある。ちなみにブエナビスタの父はスペシャルウィークだが、その父はかの大種牡馬サンデーサイレンス。母はビワハイジで母の父はカーリアンという良血なのだ。そして、桜花賞ブエナビスタの2着となったレッドディザイアは、父がマンハッタンカフェでその父はやはりサンデーサイレンス。母グレイトサンライズの父はこれまたカーリアンとなっている。つまり、1着馬と2着馬は血統構成がとてもよく似ており、血統予想が競馬に不可欠な要素であるということを今年の桜花賞は裏づけてくれた。余談だが、"差し"が身上だったディープインパクトをヒーローに仕立て上げるため、当時JRAの造園課は"差し"の決まりやすい馬場に仕立てたという話があったが、今年の阪神競馬場についても、ブエナビスタのために外差しがきくような馬場に造園課が仕立てたという噂が持ち上がっている。馬券の売り上げが低迷する中、新たなヒーロー(ヒロイン)の登場をJRAが画策しているのだろう。
 配信限定でリリースされたレミオロメンの「Sakura」という曲は、サビが印象に残るだけのあからさまにヒットを狙ったつまらない曲である。というよりも、某携帯電話会社のCMのおかげでサビには聞き覚えがあるものの、AメロとBメロは一度も聴いたことがない。きっと俺だけじゃなくて、ほとんどの人はこの曲のAメロとBメロを知らないはずだ。ダウンロードビジネスの台頭によって、サビだけを強めに打ち出してAメロとBメロは手を抜くようなアーティストが増えるんじゃないかと懸念している。
 4月14日の今日は「オレンジデー」と言って、バレンタインデーとホワイトデーで贈り物を贈り合った恋人同士が愛を確かめあう日に位置づけられている。ただし、韓国では「ブラックデー」とされており、バレンタインデーやホワイトデーで贈り物を受け取れなかった男女が黒い服を着て集まり、黒い食べ物を食べたりや黒い飲み物を飲んだりするそうだ。韓国人ってどれほどネガティヴなんだよ。
 この春、久しぶりにスーツを新調した。淡いグレーに赤いピンストライプが入った、一風変わった生地である。赤いピンストライプは、雨のように降り注ぐ血にも見える。俺はこのスーツに「ベルリンの赤い雨」という名前をつけた。
 …危険な橋を渡ろう。向こうに手が届くまで。