生命力

tetsuo_hara2008-07-15

 これさえ終われば、というかこれを終えなきゃ夏が来ないという出張があって、「"○"を付けなきゃこの部屋から生きて帰しませんぞ」という、ものすごくアウェーな感じの空気の中で、全項目に"○"を付けることでどうにか解放してもらい、帰途についた。大仕事も終え、私の心は夏模様である。
 会社の、プロゴルファー猿みたいな顔をした男のところには毎週火曜日に仕事が集中することになっており、今日もイライラしながら深くて長いため息を連発していた。彼の会話の特徴は「つまり、早い話が…」とオチを先に言うことである。しかも「早い話が…」と言いつつ早い話になっておらず、結局最初から最後まで全部しゃべる。言うなれば"黒柳徹子話法"である。
 昨日、今日、そして明日とサラブレッドのセレクトセール(せり)が行なわれている。現役時代に"天才少女"と呼ばれたビワハイジを母に持ち、7冠馬ディープインパクトを父に持つ仔馬(画像)が2億2千万円の高値で落札された。ディープインパクトは"喉鳴り"というサラブレッド特有の持病を抱えており、これは遺伝する可能性が非常に高い。このため、種牡馬としてのディープインパクトを疑問視する声も上がっているが、実際どうなるかは2年後のお楽しみである。2日目を終えての最高額は、クロフネの半弟に付けられた2億4千5百万円。落札者は"アドマイヤ"の冠名でおなじみの近藤利一オーナーだった。ほかの良血馬の落札者の欄にも、近藤オーナーの名前がたくさん記されている。俺も若い頃、犬死にしそうな感じで新宿のゴミ箱に倒れていたところを近藤利一さんに助けられて温かいスープを飲ませてもらったことがある。
 先日は知人の赤ん坊さんと遊んできた。生後4ヶ月でまだ首が座ったばかりだったが、寝たり起きたりあくびしたり泣いたりミルクを飲んだりうんちしたりする行為が、誰から教わるでもない本能的な行動なんだなあと思ったら「生命」って凄いんだなあと改めて実感した。その可愛らしい一挙手一投足が、脊髄反射的な感動の連続だった。その日、赤ん坊さんと4時間あまりを過ごした俺は、人間的に少し成長したような気がした。
 …快速の終着は、知らない街と人。きっと今から落ちてしまう運命に気付いている。夕暮れは二人の影を熱く赤く染めてくわ。憧れてるの、どこにでも行けそうなその足のサイズ