野性の証明

tetsuo_hara2008-06-11

 湿潤で生ぬるい風に俺の黒髪がなびく季節が到来した。浸み出た汗が背中をつたって腰のほうへ流れる感覚が嫌いではない。梅雨入りする、梅雨入りすると言いつつ、梅雨らしい雨にいまだ見舞われない。俺としては、早いところざぶざぶの雨に降ってもらって、さっさと梅雨に入ってもらいたい。梅雨が来て、そして明けないと大好きな夏が来ないからだ。
 ここ数日はやたらと空腹感を覚え、早弁してしまいたくなるほどである。これは今年に限ったことではなく、この季節は毎年こうなのだ。きっと、冬の体から夏の体に変わったから、エネルギーの消費量が増えたのだろう。野生動物が冬眠から目覚める原理である。
 先日は弁当を食い終えて居眠りしていると、突然電話が鳴り「警察署です。腹さん、あんたこの頃、態度悪いねえ」と毒づかれた。何のことはない、昨年度まで中ボスを務めていた男のイタズラであった。異動しても性格その他は相変わらずだ。
 ユーロ2008では、ビジャがハットトリックを記録するなどスペインが前評判どおりの強さを見せつけている。W杯よりもユーロのほうがレベルが高いという説もあり、その理由はふたつあるのだと言う。まずひとつ目は、欧州のチームはどれもこれも強豪で、W杯のようにアジアの弱小チームが出てくるようなことがない点。もうひとつの理由は、必ず欧州のどこかで開催されるため遠征の必要がなく、コンディション調整が容易である点。前回のギリシャの優勝には驚いたが、今年はどんなサプライズがあるのか、はたまた順当に収まるのか興味はつきない。
 ファミレスで食事していると、60歳前後の女性客3人が食卓を囲っていた。妙齢の婦人が3人集まった時点で危ないとは思っていたが、人目をはばからず「びゃひゃひゃひゃ」と爆笑したり、歌いながら音階を手で示したりなど好き放題やり放題だった。そして圧巻はレジで会計をするとき。自分が食べたメニューをそれぞれ支払っていたのだが、ハンバーグを食べたご婦人が、親指を立てる例のポーズで「ハンバーグゥゥゥ!」とやり出してしまったのだ。無論エド・はるみのギャグである。物怖じせずに自信たっぷりでやるところに無性に腹が立ったが、一番の被害者はレジに立った店員であろう。もし俺が店員の立場だったら"客と店員"という垣根を飛び越えてラリアットしてたと思う。秋葉原で血が流れる一方、幸せな人は本当に幸せに暮らしているんだなあ、と思った。
 …あったかい春の日差しも、寒空の下のココアも、君なしじゃただの白黒の絵。味気ないんだ。いつも潤んでた瞳は、僕が好きなとこだった。君なしじゃただの白黒の火。熱くないんだ