小麦粉カ何カダ

 皮肉なことに、しぶき氷とか雪とかを見に行った日の深夜から翌日にかけて降雪に見舞われた。騒音や雑音を雪が吸収するから、雪が降る夜は妙に静まり返る。こんな夜は、ドブネズミ達がチキンの骨をかじる音が響き渡るぜ。
 雪のおかげで、出勤に要した時間はいつもの倍の90分。早めに出発したのに7分(プロゴルファー猿みたいな顔をした男は20分)の遅刻である。しかし、どんなに雪が降って道路が凍結しようと退勤時は一目散に家路を急ぐ。説明しよう!! なぜなら月曜日はヤッターマンの放送日だからである!! 今回で第3回目の放送となるが、水戸黄門を好んで観る父親の気持ちがわかりかけてきた。俺、仲間由紀恵とかだったらドロンジョのほうがずっとイイ女だと思う。今回は山寺宏一のナレーションがウザかったなあ。
 この雪の影響で首都圏の交通機関がマヒしました、なんてニュースを聞くと「このぐらいの雪で何やってんだっぺ」と東北の人は優越感に浸る。東京人に対してはそのぐらいしか優越感に浸れるものがないのだから仕方ない。帰宅すると光子さんが「鉄ちゃん、みのもんたがお昼の生放送番組に間に合わなかっただっぺ!! 電話出演して『今日の分のギャラは引いておいてください』って冗談言ってただっぺ!!」と興奮気味に話していた。
 ズボンに使い捨てカイロを忍ばせて外食に出かけたら、店内のドリンクバイキングのあたりを徘徊したときに、知らず知らずのうちにズボンの裾から使い捨てカイロが床に落ちたようだった。親切で目ざとい店員がわざわざ届けてくれたので、麻薬密売人の外国人を装って「分カラナイ。知ラナイ。小麦粉カ何カダ」ととぼけてやろうかと思った。
 体調が芳しくないので医者に診察してもらったら咽頭炎だそうだ。ただでさえ仕事が山のようにたまっているのに、周囲から無理なお願いをされたりするから咽頭炎ぐらいじゃ休めない。俺の周りだけ雪が降って雑音や騒音を消してくれればいいのに。こんな気分のときは、3104丁目のダンスホールに足を向けるに限るぜ。3104丁目のダンスホールでは30年前のスピーカーが魔法をかけてくれるぜ。

 …指先を伝わって、今さら感じていた。何度も忘れて、思い出して、卑しいほど繰り返そう。何も変わらなくたっていい。このままでいられる様