某茄子

 俺のボーナスも、仕事量に比例して回を重ねるごとに微増傾向にある。微増するボーナスに反比例して下がり続けるモチベーション。この冬のボーナスの使い道として「地デジ対応テレビでも買おうかなあ」と言う家庭が相当数に上るものと思われる。しかし俺の場合は「待て!」である。なぜって棚倉村は地デジ放送まだはじまってませんから。金を持っても使い道がないのが棚倉人の悩みである。ボーナスいらね。金いらね。
 会社のプロゴルファー猿みたいな顔をした男のガンダム好きについては当ブログでも何度か紹介したところだが、先日は郵便物にガンダムの絵をあしらった切手が使われていたことにものすごく興奮していた。「小学生の頃にガンダムにハマっていたが、2〜3歳時はもっぱら仮面ライダーごっこだった」と言ったら中ボスに「2歳とか3歳っていうのは普通は記憶がないんだけどなあ」などとやわらかくツッコミを入れられ「あ、いやっ、その頃の写真が残っててコスプレとかしてたからさあ」などと必死で取り繕おうとしている感じが笑えた。
 俺はお取引先から郵送されてくる見積書を次から次へと開封し、なぜか一緒に同封されてくる数枚の1万円札だけは黙って己の懐にしまいこみ、あとは何食わぬ顔で事務的に仕事をこなすだけである。良いこと「49」に対して悪いこと「51」。世の中って、人生ってそんなもんだなあと思う。
 通称"二本松のズラタン・イブラヒモビッチ"に関しては、お気に入りのショップ店員(コードネーム:カトリーヌ)の髪型を栃木のお菓子になぞらえて卑猥な表現で褒めてみたり、革靴を見立ててもらう際に足に触れられたのを契機にきゃんたま袋を広げてみたりして、恋路がうまくいくかそれとも迷惑防止条例違反で逮捕状が出るかどちらに転がるか興味深く見守っているところである。今のところ奇跡的に事態は好転しているようだが、ここへ来て腐ったおかまみたいに「でもぉ、カトリーヌがぁ、やっぱり受け取れないとか言ってぇ、プレゼントおぉ、返したりしたらぁ」などとうじうじしているので、このまま牛歩戦術を続けてうじうじを続けていてはトンビに油揚げをさらわれるんじゃないかと心配している。年内にカトリーヌのことを食事に誘うことが命題となっているが、屁理屈を百個も二百個も並べてどうにか"誘わない理屈"をこしらえようとしているように思える。夜な夜な俺に電話してくるが、同じことを堂々巡りさせて、5分で済む話を小一時間させられるのだ。"このはし渡るべからず"の立て札を見た一休和尚があっけらかんと橋の真ん中を渡るように、陽気に「メシ行きましょー!」と言えばいいだけなのだ。
 …音は聴こえなくて、色だけが強烈でさ。遡って、坂を登って見ていたんだ。繋がっていた