充電器がザク

 俺の後ろの席に異動してきたプロゴルファー猿みたいな顔をした男は大のガンダム好きで、こともあろうか朝礼で「わたしガンダムとか好きなんでぇ!」と公言までしてしまう始末。ある時、ただならぬ気配を感じて振り返ると、そこにはプロゴルファー猿みたいな顔をした男が、目ん玉をひん剥くほど興奮して立っていた。何事かと思ったら「シャア専用のケータイが出る!!」と喜んでいた。さらに「充電器がザク!」などと言葉を続けていたので「買わなきゃだめじゃないですか」と言ったら「10万円!」と片言の日本語を並べるのだった。欲しいけれど値段がネックと解釈すれば良いのだろうか。
 ショップ店員(コードネーム:カトリーヌ)に好意を寄せている通称"二本松のズラタン・イブラヒモビッチ"の恋の炎は冷めるどころか日増しに火力を増すばかり。マフラーを巻いてもらえたことが余程うれしかったようで、俺はその話だけでも3回は聞かされている。彼はマフラーを巻いてもらっているつもりでも、傍から見るとそれはまさに鵜匠が鵜の首に紐を巻く光景そのものである。ディズニーのマスコットをカトリーヌにプレゼントしたことを、照れくさそうに彼は「中学生の修学旅行のお土産みたいだ」と話していたが、それこそが鵜が鮎を吐き出した瞬間である。鵜飼漁が600年以上続いている理由は、きっとこの世に男と女がいるからなんだろうなあ。

 …誰の歌だろう。何が腐ってるんだろう。昼間のような夢を、ただもう垂れ流しっぱだろう