ノーザンダンサー系×ヘイルトゥリーズン系

　喩えるならばヴィクトリアマイルの頃のカワカミプリンセス。つまり絶不調ってこと。咽頭炎を発症し、喉の痛みと38度を超える高熱にさいなまれ、二日続けて点滴をキメた。そして運が悪いと思ったのは、よりによって絶不調のときに会社の研修会が開催されたから。自分の部署が主催する研修なので、俺も壇上へ上がって講釈を述べなければならない。しかし38度もあるといつもと違う種類の「度胸」が覚醒して、「…については耳にタコができるほど聞かされていますが、…あ、耳にタコができるといえば野球の長嶋茂雄さんは監督時代にミーティングの席で『オリックスについては耳からタコが出るほど聞いていると思うが…』と言ったそうです。耳にタコが出来るだけでも同じことをいやと言うほど聞かされてると思うんですが、できたタコが出てきちゃうんだから、相当な回数同じことを聞かされたってことでしょうねえ。げらげらげら」などと本筋からそれることもしばしば。（実際にしゃべったのは前半部のみ）
　明日は３歳牝馬三冠レースのひとつ秋華賞が行なわれる。ステップレースのローズステークスを危なげなく快勝したアンカツ騎乗のダイワスカーレットが１番人気に推される見込み。ダイワスカーレットとダイワメジャーは、ともに母がスカーレットブーケで、タネ違いの兄弟である。兄メジャーの父はサンデーサイレンスで妹スカーレットの父はアグネスタキオンということは、アグネスタキオンはサンデーサイレンスの子供だから、母は同じだが父同士が親子という複雑な関係になる。これは人間界で言えば「華麗なる一族」の鉄平と銀平みたいな骨肉の関係（最終回では鉄平も銀平も大介の子供だったというオチがついている）ということになるが、競馬界においては珍しいことではない。ちなみに俺の予想だと、逃げ・先行馬が少ないことからスローペースとなり、前へ行った馬が残る展開と見た。本命は一般論と同じくダイワスカーレット。
　カモノハシとハリモグラは、哺乳類のくせに卵を産む"変わった"生物である。しかし、人間が彼らのことを変わった生物と思っているだけで、当人たちは自分のことを変わっているなんて思ってはいない。通称"二本松のズラタン・イブラヒモビッチ"は相変わらずショップ店員に恋をしており、俺が「ネギをしょったカモ」と幾度となく酷評しても月２回のペースで会いに行ってしまう。彼は変わっていると思うが、周囲が彼のことを変わっていると思っているだけで、当人は自分が変わっているなんてちっとも思ってはいない。俺は人間だからたまには悩むけれど、野生動物は悩みがなくていいなあと思った。
　…宇宙船値札付きなら甲州街道で試したい。可能性など別に、あろうが無かろうがかまわない