佐賀北の三番打者

 昨日は出張で、俺を含めた5人が1台の車に乗り込んだ。残暑が厳しいうえ1台に5人も乗ったもんだから車というより圧力鍋みたいなもので、俺達5人は圧力鍋の中で蒸かされる豚まんのようになっていた。おかげで出発した瞬間から汗だくである。出張先ではエアコンの効いた部屋へ通されたが、俺は相手のことをとにかく怒り飛ばすからハッスルしてますます汗だくになる。俺を含めた5人の豚まんはすっかり水分が蒸発してくたびれた干しイモのようになっていたが、昼飯に熱い「からしねぎラーメン」を食べたもんだから残っていた体内の水分を一滴残らず絞り出し、汗だくの度合いは最高潮に達した。夏の出張は楽じゃない。
 吉野家の裏メニューで、牛丼の具材の汁を多めに盛り付けた状態のことを、その土地その土地で「汁だく」と呼ぶところと「つゆだく」と呼ぶところがあり、俺の周囲では「汁だく」を常用していた。しかし、ミュージックステーショントーク華原朋美が「つゆだく」と発言したことにより全国的に「つゆだく」が通例となったと考えられる。そのほか、「ねぎだく」とオーダーすれば玉ねぎを多めに盛り付けてくれる、などの裏サービスも存在するようだ。余談だが、検索サイトで"つゆだく"と検索すれば牛丼関連のネタがひっかかるが、"汁だく"を検索するとエロサイトばかりヒットしてしまう。さらに"汗だく"と検索するとビリーズブートキャンプ関連に飛ばされてしまうから注意が必要だ。
 通称"二本松のズラタン・イブラヒモビッチ"は、長年連れ添った真贋の怪しいプラダの財布(パチンコ屋の景品)と決別し、信用のある店で本物のプラダを購入した。当然数万円はする代物だが、母親に「1万円ですぅ」と偽りの金額を申告しているところがいじましい。
 サッカー国際親善試合のカメルーン戦。バルセロナ所属のエトーを見れたのは非常に嬉しかったが、カメルーンの選手たちは本来の力の半分程度しか出せていなかったように思う。長距離移動の疲れからコンディションが低下したという説もあるが、モチベーションの方向が試合よりもその後の秋葉原の電気街でのお買い物のほうに向いていたんじゃないかと思う。
 夏の高校野球大会の決勝戦。8回裏に佐賀北高校の副島選手が満塁ホームランを打った瞬間、テレビの前の視聴者の多くは飛び跳ねたり腕を振り回したり泣いたり叫んだりしたと言われている。感動したとか鳥肌が立ったという話も直接俺の耳にちらちら聞こえてきている。仕事中だったのでリアルタイムで見れていない俺はニュースで知ったにすぎないが、プレッシャーも相当だったろうに満塁のあの場面でよく打てたものだと関心した。
 妙齢に達した通称"二本松のズラタン・イブラヒモビッチ"のナンパの手口は、メールアドレスの入った名刺を異性に配ることである。先日はカンフル剤がわりにチューハイを飲み、イベント会場で好みの女性を見つけては名刺をばら撒いていた。"ばら撒いた"とは言っても配れたのはわずか3枚である。現在は期待と股間を膨らませながらメールを待っている状況だ。配ったのが3枚だから、野球に喩えればランナーが3人。つまりは満塁ということになる。佐賀北高校の三番バッターのようにホームランを打てるのか、はたまた凡退してしまうのか…。今後の行方を見守りたい。
 …シャガールが描いた観覧車に乗ろうよ。沢山の屋根を見下ろしたい。6日目も雨だ