淋しい熱帯魚

 梅雨さえ明ければこっちのもの。そうとなれば母なる海、大洗へ行くだけである。台風が迫っていて風が強く、砂が容赦なく目に入ったが、それでも俺は波と戯れた。去年から比べると著しく禿げ散らかった俺の頭だが、それでも海は俺を待ってたし、波は俺を裏切らないと思った。むしろ、潮水(塩水)の殺菌作用とかが頭皮に好影響を与えて、少し髪が増えた気もする。
 今日なんて日は嘘みたいに暑い一日だったが、出張のため灼熱のアスファルトの上をシエンタ(通称:ムッソリーニ)が駆け抜けた。うち一箇所は90歳近いお婆さんのところだったが、女性としては村で始めて第一種普通自動車免許証を取得したという彼女はいまだ現役ドライバーである。10分で済ませるはずの用務が30分かかってしまったが、濃くて意義のある時間だった。
 外様ボスは話の流れを一切無視して「松井はメジャー通算100本塁打を打ったっけ?」などと急にはじまる。総合失調症の症状を疑ったほうが良いと思った。それにしても松井秀喜のスウィングスピードはとてつもなく速い。あのエネルギーを野球以外の何かで有益に使えないだろうか、もったいない。
 この頃友達になりたいと思うミュージシャンは、リップ・スライム。好みのジャンルではないが、ステージがとても楽しげである。熱帯夜としては、イエローモンキーの熱帯夜が1位でリップスライムは2位。そして3位にウィンクの淋しい熱帯魚をエントリーしたい。
 通称"二本松のズラタン・イブラヒモビッチ"が、二万円の予算でブランドものの財布を見繕えと無理難題を押し付けてきた。カルバンクラインを超一流ブランドだと思っている彼の価値観(これは、昔付き合っていた女性が同ブランドのロンTを着用していたことに起因すると思われる)からすれば二万円というのは妥当な線なのかもしれないが、二万円ぽっちの財布なんて俺にはなかなか思い浮かばない。女性をデリバリーする二万円は惜しまないくせに、財布にかける二万円は彼にとっては清水の舞台から全裸で飛び降りるぐらいの英断らしい。そして通称"八山田のディディエ・ドログバ"のことをのべつ幕なしにああだこうだとはじまるのがいつもの彼のパターンだ。少年らに火を放たれたホームレスになぞらえてみたり、ぬらりひょんの孫みたいなもんだから"3代目"って呼ぼうと言ってみたり、ブログで公開できるのはここまでが限界だが、とにかく二人とも淋しい熱帯魚である。
 …男になり、女になり、天使になり、悪魔になり、憂鬱になり、凶暴になり、優しくなり、冷たくなり、コンピュータ社会になり、世界は今発展途上って