濃い夏

 "この夏の第2のヤマ"と目していた出張が今週の月曜と火曜にあった。何が大変かって、俺が不得手としている「早起き」をしなくてはならないから大変だ。会議のほうは、歯切れが悪くどうにも釈然としない本社のお偉方衆の話や、カツラを被った男の話をうとうとしながら聞いていた。本社の人間はとにかく杓子定規な見解しか口にせず、参加者からの意見や質問にはもごもご口ごもり、引き続き検討して後日答えを出します、などと逃げる始末。俺は逆の立場じゃなくて良かったなあ、と思った。討論する時間も多めに設けられていたが、2日間で俺が口にしたのは「例えば〜、どんな〜」のひと言だけである。
 出張が終わって職場へ戻ってみれば取引先から突き上げを喰らったりして、今週はとにかくハードな週である。おかげで俺は、先日のサウジ戦の鈴木啓太ばりにコンディションが下降している。
 結局横田めぐみさんが帰ってくることはなく、参院選は野党が歴史的大勝を収めた。小泉前総理の人気は未だ高いようだが、俺から言わせれば小泉さんはガッツ石松と同レベルである。法案は読めず、政策の理解度もゼロに等しい。何しろ総理官邸に帰れば一目散に全裸になり、大声でオペラを歌いだすような男である。エルビス・プレスリー記念館では滑稽なモノマネに興じてみたり、相撲を観戦しては「感動したー!!」と吠えてしまう。あからさまに政治素人のガッツ石松が総理になったほうがまだ好感が持てる。
 職場では外様ボスがアロンアルファで何かの修繕作業を試みており、「あら、指にネバっちゃった!! あら、今度はこっちにネバッちゃった!!」と、収拾がつかない状態に陥っていた。行くところまで行ってほしいと思った。
 …だけどロンリー、みんなロンリー、きっとロンリー。答えを求め彷徨いながら愛し合うことができたら、太陽に少しだけ近づける