教祖

 会津みたいな古式ゆかしい田舎町で凄惨な殺人事件が起きたことについて、おおまかな概要をニュースで知ったところまででほとほと嫌気がさし、それ以上のこと、例えば少年の家庭環境だとか、学校生活だとか、成績だとか趣味だとかそういうことはどうでも良いと思って、その手の報道からは目も耳も覆って避けていた。ところが、少年が自首する直前に立ち寄ったインターネットカフェで鑑賞したDVDが、俺の敬愛するマリリン・マンソン(年賀状のデザインにもたびたび登場)だったというからもはや他人事では済まされない。マリリン・マンソンは89年に結成されたバンドで、ゴシックロックの帝王と言って良い。96年にリリースされた「アンチクライスト・スーパースター」(俺のケータイのメルアドの由来がコレである) が全米第3位になりミリオン・セラーを記録。その風貌や音楽性から反キリスト教悪魔崇拝者という扱いをされることも多く、コロンバイン銃乱射事件では犯人に影響を与えたとしてバッシングを浴びた。ワイドショーによると、今回の会津の殺人事件でも犯人の少年に悪影響を与えた可能性がある、とされている。そのカリスマ性から、悪魔教の教祖的な見方をされるマリリン・マンソンだが、悪魔崇拝者でもなんでもなくて、単なるロックアーティストであり、ロックアーティストとしてのマリリン・マンソンのことを、俺は断固支持する。
 徳光和夫がMCを務めるそのワイドショーで、少年犯罪に対して大人たちはどうすれば良いか、と議論した末にミスチルの"タガタメ"のフレーズを紹介していた。それは「子供らを被害者に、加害者にもせずに、この街で暮らすため、まず何をすべきだろう? でももしも被害者に、加害者になったとき、かろうじて出来ることは相変わらず、性懲りもなく、愛すこと以外にない」という部分である。最初からそういうことを言いたまえ、マリリン・マンソンの音楽が少年に悪影響を…とかそんなのはいいから、と思った。
 そのMr.Childrenのコンサートを見てきた。"イロドリ"で幕を開け、アンコールの最後も"イロドリ"で締めるという型破りな選曲だったが、"イロドリ"はサラリーマンやOLの応援歌としては最高である。ヴィジョンに流すCGとか演出にかかる機器にお金をかけていて、やっぱり興行成績の良いバンドはすごいなあ、と思った。その金のかかったステージに埋もれることのない桜井和寿はすごいヴォーカリストだと思った。躍動感溢れる動き、観客の煽り方、CDで聞くのと遜色のない歌唱力…。ファルセットまでCDとほぼ同じように聞かせるんだから圧巻だ。ジョン・レノンの"イマジン"のカヴァーから"センター・オブ・ユニヴァース"の流れがとても良かった。しかしMC等(下ネタも多少あったが)も含めて聖人君子と呼ぶに相応しい。こちらも、マリリン・マンソンとは真逆の意味で教祖のようだった。
 俺も、日常に"イロドリ"を加えられるよう、マジメに仕事頑張ろう。
 …なんやかんやと溢れてるけど、ここにあるもの、ここにないもの、それで全てです。今言えること、それはななだろう? 生きてることと、死んでくことと、それくらいです