常連化現象

 かなり遠のいていたが、お気に入りのビーフシチューを食べてきた。遠のいていたのは"暖冬"のせいと考える。バンプオブチキンは「冬が寒くて本当に良かった」と歌っているが、今年はその真逆である。こう冬が暖かくては、なかなかビーフシチューという気分になれない。味に関してはここで何度もレポートしているので改めて触れないが、まさに"筆舌に尽くしがたい"と言ったところ。そのレストランに行ったのは久々だったが、常連ぶった立ち居振る舞いが功を奏してデザートをサービスしてもらい、帰り際には「今年もよろしくお願いします」とシェフに深々と頭を下げられた。難点は、セットメニューのコーンポタージュを飲むと腹が膨れてしまい、メインのビーフシチューを完食できない恐れがあることぐらいだ。コンポタだって相当おいしいので「コンポタを残す」という選択肢は浮かばない。
 昔よく通っていた回転寿司屋(その回転寿司屋は、俺が目を離した隙に廉価な店に方向変換してしまったからそれ以来行っていない)の板前さんとドラッグストアで偶然会った。俺は板前さんのことを半分忘れていて、たしかに見覚えはあるんだけど誰だっけなあという挙動不審な目で見ていたら、相手もそれを察してくれて「忘れちゃいましたか? ○○ですよ」と教えてくれた。その瞬間、頭にもやもやとかかっていた霧が物凄いスピードで晴れて、当の回転寿司屋が廉価な店に方向変換した不満を思い切りぶつけてやった。"罵倒"するかのように。
 俺は、どんな店でも(仮にファミレスでも)数回食べに行っただけで常連扱いされてしまう不思議なチカラの持ち主だ。
 「モンスターハウス」という映画を観た。ハウスの正体が明らかにされるまでの興味とドキドキは凄かったが、この物語をひと言で言い表せば「ネバークラッカーという爺さんはデブ専だ」ということである。世の中に"物好き"というのは確かに存在する。警備会社に勤める俺の友人がデブ専であるという事実がそれを証明している。
 「プロフェッショナル」という番組に「YAWARA!」や「20世紀少年」を描いた浦沢直樹先生が出演していた。ネームを練るときのことを、「頭の中で何度も何度も転がして、そして一気に描く感じ。描き終えたときは大泣きした後みたいな、嘔吐しまくった後みたいな、そんな感覚になり、その感覚が強ければ強いほど良い作品という手ごたえを得る」みたいなことを話していた。俺がブログを書くときと似ていると思った。(などと格好をつけてみても俺の場合はそんな高尚ではないうえ、単に睡魔との闘いだという説もある)
 「プロフェッショナル」にも少しだけ出ていたが浦沢直樹の担当編集者の長崎尚志さんという人物はかなりのやり手で、"もうひとりの浦沢直樹"と言われるぐらい浦沢作品には欠かせない存在である。かの手塚治虫の編集者を務めた経歴もあって、手塚先生にも忌憚のない意見を進言し「いくら僕が天才だって、できることとできないことがあるんだ!」と大声で怒鳴られたという逸話がある。しかし己れのことを「天才」と自覚してしまう手塚治虫はやはり大物だ。ちなみに「ジョジョの奇妙な冒険」で知られる荒木飛呂彦手塚賞を受賞した際、手塚治虫は荒木作品について「たいへん興味がある」とコメントしている。東北出身の漫画家がなかなか出ないことについて「石ノ森章太郎先生が…」と言うと、「だからああいう程度のものでね」などと毒を吐いたりしたらしい。
 この頃では園児からも「かわいい」などと言われ、実年齢よりも若く見られがちな俺。その秘密は波紋法をマスターしているからだ。震えるぞハート!! 燃え尽きるほどヒート!!
 ※波紋法とは「ジョジョの奇妙な冒険」に登場する概念。水に波紋を起こすように「肉体」に波紋を起こし、エネルギーを作り出す呼吸法のことである。
 …あいつの前ではみんな要領得てるけど、あいつのふるまいも見事笑われはじめた。哀れ、お山お大将。山の上から降りなよ