カス・ダマト氏が生きてれば…

 神と悪魔が禁断の恋に落ち、二人の間に誕生した隠し子。それが俺なんだと思う。おかげで多感な時期は精神が分裂気味で、時には死ぬほど優しかったり、時には狂おしく残虐だったりしたが、この頃じゃだいぶ中和されて普通の人みたくなってきた。とは言いつつも、たまには悪魔の遺伝子がめりめりと表に顔を出し、カブトムシのオスのツノをハサミでちょん切ってカブトムシのメスにアロンアルファで接着して「ほうら、性転換手術が成功したよ」などと言っちゃうわけだ。
 いじめられて死を考える学生さんには、生きてればいくらでも楽しいことがあるって教えてあげればいいと思った。俺がティーチャーだったら「酒、女、ロック」の良さを徹底的に教え込むけどね。ちなみに、いじめられっ子だったマイク・タイソンは、可愛がっていたハトをいじめっ子に殺されてしまい、ブチ切れていじめっ子を半殺しにしてしまう。それがマイク・タイソンの才能が覚醒するきっかけになったという話は有名だが、今じゃただのバカになってしまった。どうせおバカになるなら、ガッツ石松みたいな方向を向けばいいのに。そういえば間もなく亀田興毅選手の防衛線だが、亀田の勝利も敗北も見たくはないと思った。その日が忘年会だからちょうど良いや。
 結局ボーナスの使い道は、新しいデジカメを買ったぐらいだ。IXY DIGITAL900IS。人物の顔を高精度で認識し、自動的にピントを合わせてくれるフェイスキャッチ機能にも感動するが、広角28mmで撮影された迫力の風景写真が購入の決定打となった。本体のコンパクトかつスタイリッシュなデザインや、シャッタースピードも気に入った。「趣味は?」と聞かれたら思わず「写真ですが」と答えてしまいそうだ、まだ1枚も撮影してないのに。ちなみに数年前に買ったサイバーショットは、ほとんどあい子さん(母)が占有しており、所有者のはずの俺はもう何年も触らせてもらっていない。
 "写真"はいつしか"画像"と名前を変え、紙じゃなくてデータとして扱われるようになった。写真はたいがい現像するから「あとで見る」こともあったが、デジカメの時代になってからは「あとで見る」ということをほとんどしなくなってしまった。と、ピエール瀧が言っていた。たしかにその通りで、まさに文明の利器の落とし穴である。ケータイで撮影された画像なんて、機種変しちゃったら死んだも同然だ。写真で思い出したが、椎名林檎は「だって写真になっちゃえば、あたしが古くなるじゃない」と唄い、撮影されることを嫌ってたっけ。
 デジカメ以外欲しいものがないわけじゃないが、いきなり桁違いのものがほしかったりするからボーナスではデジカメしか買わないんだと思う。オーデマ・ピゲとかヴァシュロン・コンスタンタンとか、家とか。なんなら中国から嫁でも輸入しようか? 農家やってないとだめですかそうですか。
 会社でのんびりジャスミンティーを飲もうとしていると、けたたましく電話が鳴り「朝から晩までジャスミンティーばっかり飲んでんじゃねえよ!! 仕事しろよ!! 『よろしくどうぞー』か!? 得意の『よろしくどうぞー』か!? ほら言ってみろよ『よろしくどうぞー』ってよ!!」と言った具合で質問が数多く寄せられる。「ブッシュってどういう意味?」って聞かれたときに「それはー、つまりチン毛って意味」って答える準備だけは常にしてあるんだけれど。
 …体は、みるからに元気そうだね。みんな混ざりもの、雑種天国。不思議そうに見つめてる子供達が、同じような顔をして、争ってる。ほらそこのお父さん、忘れてるよ。ここは雑種天国