羽に願いを

 普段は巨人軍のことしか話題に上らない俺の職場だが、さすがに今日だけはサッカーの話がちらほらと出た。ヒディングは良い監督だが、言うほど奇をてらうような戦術を用いたりしない。オーストラリアの選手交代は誰でも思いつくことだし、むしろギリギリまで追い込まれないと選手を代えないジーコのほうが異常と言えよう。うちのあい子さん(母)も川口の飛び出しに関しては苦言を呈していたが、セットプレイでキーパーが飛び出すことは決め事になっていたらしいから川口ばかり責めることは出来ない。コンフェデのときもそうだが、ジーコジャパンはいつも初戦がお粗末だ。クロアチアには勝つだろうから、ブラジル戦は最高にエキサイティングになるはずだ。日本にとって3戦目が消化試合にならないことだけを祈りつつ、星に願いを。
 現段階でのベストマッチはアルゼンチン対コートジボワールだろうか。大注目のリケルメはしっかり2アシスト決めるし、サビオラのドリブルはかなりキレていたようだ。コートジボワールドログバのプレイも光っていた。今大会、若手が元気なチームは調子が良い。オランダのロッベン、イタリアのピルロ、そして俺の好きなロシツキーのいるチェコ。若手が元気なチームと比べるとジーコジャパンはフレッシュさで大きく見劣りする。中古CDばかりを買いあさってCDラックに並べたみたいだ。
 先週の木曜と金曜は、中ボスと二人で研修を受けてきた。普段の中ボスは、巨人軍の話を皮切りに仕事そっちのけで与太話をはじめるタイプだが、そんな陽気さとは裏腹に大ボスに監視されているという懸念も抱いている。メガネの角度を変えながら、一生懸命に大ボスのモノマネしてたっけ。たしかに、TPOに応じて絶妙に角度を変える大ボスのメガネのことは、俺も大いに気になっていた。
 仕事帰りに寄った先で、久々にスケベを見た。パイオツ型のパンを嬉しそうに周りから食べ、ビーチクの部分はいちばん最後に口に入れていた。同僚に卑猥な言葉の機銃掃射を浴びせ、「ちょっともういい加減にしてよお」的なことを言われるキャラである。俺は、もう少し歳をとったらその人のようになりたいと、ずいぶん前から思っている。
 土日はスロットで大敗を喫した。俺はオンドリみたいなものだ。自分の白い羽を一枚一枚引っこ抜いて、ひとつひとつに願い事を書いてフーッと吹いたんだ。黒い外車だとか高級腕時計だとか海外旅行だとか地デジ対応薄型液晶テレビだとか前沢牛まるごと一頭だとか。羽が全部なくなったら、次は爪や皮さ。そのあとは筋肉とか内臓、すげー長い腸。
 …守られる切なさに溺れてしまわないで。守ってあげたいと思える強さに逢えるまで