セルフ・コントロール

 猫と遊べる某所のマネージャーは、猫語が完全に理解できる人物で、名前も「猫田」なんじゃないかと思うほどの猫バカである。そんな猫田さんにとって、その某所で猫に囲まれて過ごすことこそが天職かに思えたが、今月で退職するというから驚いた。夢のために三交代の工場に勤めて資金を貯めるんだとか。その夢が何なのかひと通りの説明を受けたが、結局何が言いたいのか何をしたいのか、俺には理解できなかった。猫田さんは県職員とかトイランドのマネージャーなどといった経歴も持っているが、"猫"と"ラジコン"という似ても似つかない二つのものに振り回されて人生をジョイしている。いつか夢が叶いますように。
 フレンチブルドッグのオスをなでてあげようと思ったら、俺に欲情して腕にしがみついて腰を振り出した。フレンチブルドッグと俺は、種を超えた禁断の関係になってしまった。
 この頃はケータイでドラクエ2をプレイしている。ロトの血を引くものならば、人の家に勝手に上がりこんで宝箱を開けたりタンスを開けたりして役立ちそうなアイテムが入っていれば自分のものにしても構わないらしい。そのぐらい傍若無人じゃないと世界は救えないのだろうか。物語は佳境に入り、だいぶ行き詰ってきた。どうしようもなくなったらあの男に聞くしかないな。そう、"八山田のディディエ・ドログバ"に。彼は、高橋名人の次にハミコンに詳しいんだ。
 土日の休みにこそ、業界で"聖書"と呼ばれる黒いバイブルを持ち帰って勉強しようと思うが、やろうやろうと思ってもこれがなかなか開けない。自制心が欠如しているんだ。是が非でも勉強しようと思ったら、減量中の力石徹みたいに完全密閉した倉庫のような部屋にこもるしない。ちなみに力石は、ジョーとの試合には勝ったが、過酷な減量が災いして試合後に還らぬ人となってしまう。センセーショナルな力石の死は、漫画の登場人物であるにも関わらず実際に告別式が行われたほどである。"聖書"と呼ばれる黒いバイブルに書いてあるのは「シャツのボタンの数と5月の最低気温をたすとベルトの穴の半径の2乗」とかそんなことばかりだ。
 …終わらないことどこかに在ると、こわれそうに彼女は言う。枯れるまで抱かれた