蠢き

 あるデータを探しているが心当たりはないか、と前の職場から電話がかかってきた。「そのデータなら"マイドキュメント"あたりに入ってると思いますが」と答えると「あー、っていうか"俺のドキュメント"ね」と言われた。お茶目で無邪気な俺は、"マイドキュメント"を"俺のドキュメント"と名称変更しており、直さずにそのまま異動してしまったのだ。恥ずかしいような、懐かしいような。あの頃は良かったなあ。
 30歳を超えた俺にとっては年齢的にも今回のW杯がラストチャンスだったが、ジーコから招集命令は下らなかった。自分の夢を松井大輔に託したいところだったが、その目論見も崩れてしまった。フランスのサッカー関係者をうならせた松井のテクニックをドイツで見たかったんだ。
 今、日本でいちばんバイタリティが高いのはみのもんただと断言して異論はなかろう。昼の生放送だけでは満足せず、それに加えて朝の生番組もいつの間にかはじめてしまった。60歳を過ぎてるとは思えない。黒くて油ギッシュな顔の皮を剥ぐと、働きアリがびっしり入っているという噂まである。あの人1時間ぐらいづつちょこちょこ睡眠をとって、トータル4時間しか寝ないんだとか。睡眠時間が少ない生き方は、俺には絶対無理。
 本格的に暖かくなり、昆虫や害虫の類も増えてきた。やれ追い出そうか、やれ叩き潰そうかとあたふたしているそんなとき、通称"八山田のディディエ・ドログバ"だったらこう言うだろう。「喰っちまえばいいんじゃないですか、面倒くさい」。彼が台新店の知恵袋と言われる所以がそこにはある。
 …そうね、もし今あなたと初めて逢えたなら、時間も怖くはない。追いかける想いの行方はまだ、色褪せた笑顔を抱きしめたまま