三十路ボンバイエ

 仕事の疲れなのか、寝ても寝てもまだまだ眠い。とにかく眠い。この週末、軽く30時間は眠った気がする。週末に思い切り遊んで月曜日から金曜日までの5日間でゆっくり土日の疲れを癒す、というのが俺のスタンスだったはず。逆になっては俺が俺じゃなくなってしまう。
 めちゃイケスペシャルにも一切ザッピングせず、ひたすらマグロ漁のドキュメント番組を観ていた。年度末から今までテレビもろくに観なかったが、久々にテレビに夢中になった。マグロ漁は、松方弘樹や梅宮辰夫の娯楽的な釣りなんかとはかけ離れている。漁師の生活がかかっているし、港を出れば命がけである。今後も人類が地球の支配者で居続けられるかどうか、その辺のヒントがマグロ漁には隠されている。
 2、3年はまともにプロ野球中継を観なかったが、WBC以降は結構観るようになった。とっくに引退したと思っていた川相昌弘選手が、中日で三塁を守っていたことには驚いた。職人らしく堅実なフィールディングを魅せていた。
 ケータイをFOMAに機種変したのでサイト情報誌を買った。出会い系の広告がやたらと多い。簡単にギャルをゲットできるんじゃないかと錯覚してしまいそう。そして飛びつくんだ、通称"二本松のズラタン・イブラヒモビッチ"みたいな人が。
 久々に、通称"八山田のディディエ・ドログバ"から連絡があった。彼の職場まで行っても車が見当たらないこともままあり、これはいよいよ就労ビザが切れて国へ帰ったのかと思っていた矢先だった。「会社のパソコンのシステムが変わる時期でたいへんだが、パソコンなんてパイオツと同じでいじればいじるほど良くなってくるんだ。だから俺は大丈夫だ」などと、上手いんだか上手くないんだか合ってるんだか合ってないんだかわからないたとえ話に言いくるめられた。マウンテンゴリラが千年生きると人間になれるという話を聞いたことがある。きっと彼がそれなのだと思う。
 異動してからもう半年ぐらい働いた気がするが、まだ1週間だ。1ミリの努力も1ミクロンの苦労もしないまま、今までの31年間は才能だけで生きてきた。これからは努力も少しは必要か? バービーボーイズは「小僧」という曲で"土曜日なんて来なきゃいい"と歌ったが、今の俺にとっては月曜なんて…、言うな言うな。ペテン師と空気男の旅はまだまだ続きます。
 …息をころし地を這う日々はもうやめ。霧雨同様、不確かな力を振り絞った。向日葵の黄金に憧れた体は、命を紐をほどいた