カウントダウン・トゥ・エクスティンクション

 異動が決まった俺。後任には大ベテランが登用されることになった。関係筋からの情報によれば、仕事もバリバリにこなし、人間的にも素晴らしい人物とのこと。その人の悪口は今まで聞いたことがなく、なかなかお目にかかれないような立派な人だそうだ。俺がいなくなった後の話をされるのは少し寂しいが、そこまで言われると異動なんてせずにその人と働いてみたいと思ったりする。俺はというと、プレッシャーで体も心もズッシリと重い。童話「赤ずきん」に登場する悪い狼は、体に石をつめられて井戸の底に落ちて死んでしまうのだが、それにも似たズッシリ感である。
 親方はちょっと目を離すと「発達障害かもしれない」というタイトルの文庫本を読み出す。発達障害じゃなくて単なる痴呆症だと思うんですが。
 数日前にはじめて5号機を遊技した。「信長の野望」である。合戦の末、北条氏康には勝利したものの、武田信玄の軍にはコテンパンにやられ、徳川家康伊達政宗に忍びを送るがことごとく失敗。5号機にしてはそこそこ出る機種だと思った。
 …すべからくひれ伏し、自滅していくポーズ。あからさまに心まで沈む、まるで夕陽の色褪せ