踊る一寸法師

 行きつけの回転寿司屋は、副店長を皮切りに店長や担当者までごっそり入れ替わってしまい、馴染みの店でありながら初めて行く店のような雰囲気に様変わりしてしまった。「何かおすすめは…?」と言えるようになるまでは少し時間がかかりそうだが、全体的に寿司のレベルは上がっているので良しとしよう。
 昨日、購入したてのソーラー式腕時計にさんざん太陽を当てた親方だったが、まだまだ満足していない。「はじめは8時間ぐらい充電したほうがいいって取説に書いてあったから」と、今日も陽の光に当てまくっていた。お日様は当然東から西へ動くので、室内の日照範囲も少しずつ動く。日照される場所を追いかけて腕時計の位置を少しづつずらす徹底ぶりにはもはや脱帽である。あの人やっぱり足りないんじゃなかろうか。きっとそうだ。
 前の会社には、エンジンスターターを使って車のエンジンをかける際、わざわざ屋外へ出てからリモート操作するおば様がいた。室内からでも十分に届くのに、一度外へ出ないと気がすまないみたいだった。俺は、そんなんじゃエンスタのありがた味も半減じゃん、とか思って悪魔みたいな顔で笑っていた。親方とこのおば様はおそらく同じ種類人間だ。この種の人が「効率の良い仕事をするために」と言うのはいささかお門違いである。俺は、人間が尻からうんこをしなくする方法を日夜研究中である。"効率化"とはこういうことを言い、面倒くさがり屋さんと発明家は表裏一体だ。車のオートマチック・トランスミッションを考案したのは面倒くさがり屋のアメリカ人だし、彼らは面倒くさがり屋だから食肉用の牛の全頭検査なんてするはずがない。安全で味も良い和牛がいちばんだ。
 サッカー日本代表対米国代表はテレビ東京でしか放映しないみたいだ。福島県人は見るなというのか。ジーコの髪の毛を引っこ抜いてやりたい気分だ。
 やっぱりカーオーディオは故障したようで、CDは動かない。おかげで移動中はタナグラFMばかり。DJテツオに、ズーム・イン!!
 …くゆらす煙り立ち上る、肌をさすような朝。ああ木枯らし、ため息さえ連れて来る時雨。いずれはこの指も、その肌に辿り着けるのか?