大人(ADULT)

 東京事変の2ndアルバムはたいへん良い。椎名林檎名義で活動していた頃も含めると、なかでもより「歌」が際立っている"無罪モラトリアム"がいちばん好きだ。勝訴ストリップ以降は音が太くなってしまい、折角のヴォーカルが演奏に埋もれて聴こえてしまう。もともと椎名林檎の詩とかメロディとか譜割りとか息遣いが大好きなんだから、サウンドプロダクションさえ俺の好みになってくれればヘヴィローテーションすることはまず間違いない。椎名林檎の口から放たれる日本語は美しい。俺は椎名林檎を日本語の先生と崇めている。
 親方はいつでも周囲への配慮が足りない。今日などは人事に関わることを平気で大声で喋ってしまい、ボスからお叱りを受けていた。機嫌を損ねた親方はキムチを食べたくなったらしく、俺に注文を取りまとめるように詰め寄ってきた。もちろんあっさり断ってやった。俺は仕事をしない男だが、かと言ってガキの使いをするための要員ではない。くだらないことばかり喋るのは親方のノドぼとけか? 万力でつぶしてやりたいぜ。
 俺は8時間の勤務時間を、まるごと8時間サボることのできる人間だ。それにはコツがある。さも仕事をしているように見せるためのカモフラージュとして、エクセルで小難しい表を作ってみたり、数週間先の仕事の書類を作るフリをしてみたりすればいいのだ。その"さも仕事をしているように見せるためのカモフラージュ"が、結果的に仕事として成果があがってしまう。良い意味で本末転倒であり、それが出来てしまう俺は天才なんじゃないかと思う。俺という人間は、神が創った最大の失敗作であると同時に神の最高傑作とも言える存在なんだ。
 決まって夕方5時前後にメールをよこすのは通称"二本松のズラタン・イブラヒモビッチ"。おまいはメールマガジンか何かのつもりかと言いたい。
 秋篠宮様には、あんたもすきねえと言いたい。
 …「私から奪って、いらない感情を」。こんな思考がむしろ逃げ道とわかってても、答えはあいまいで、真実はあやふやで。取り繕うことだけ、やたら上達していく