戌年

　つい最近新年を迎えたと思ったら、もう１月が終わろうとしている。早くも１年のうち12分の１を消化してしまったのか、早いなあ。
　今日の親方は傑作だった。担当者との打ち合わせでは「非！、非！」と強い口調で言っていたくせに、そこへボスが顔を出してひと言物申した途端に「是！、是！、絶対に是！」とコロッと手のひらを返しやがった。みっともないし情けない。よほど自分で泥をかぶるのが嫌らしい。下の者の話には聞く耳を持たず、ふた言目には「責任」と「監査」という必殺の二文字熟語（俺にとってはせいぜい握りっ屁みたいなものでしかない）を突きつけて無理矢理ねじ伏せるのだ。思い込みが激しく、固定観念が強いから扱いに困る。例によって「責任」の二文字熟語を突きつけられた人がいた。問題にするほどのことでもないのに「責任とれるのか」などと問われ、当事者はかなり頭にキていたようだった。俺があとでこっそりフォローすると「あの時はさすがにカチンとキたけど、犬に何を言っても無駄だなと思ってね」と冷めた口調で言っていた。よくわかっておいでで。ロナウジーニョの幼少時代が語られるとき、犬を相手にサッカーの練習をしていたエピソードが引き合いに出されるが、親方みたいな犬ではサッカーの相手にもなりやしない。
　車のチューンショップの社長は、約30年間続けた喫煙に終止符を打つべく禁煙を敢行した。ニコチンの禁断症状というものは俺が考えているよりもずっとずっと凄まじいようだ。特に最初の１週間はヤバかったと聞いた。布団に入ってもいっこうに寝付けず、夜中に息子の金属バットを持ち出しては外の大木を意味もなく殴打したり、田んぼの真ん中を全力でダッシュしたりと変質者状態だったらしい。現在も５ヶ月間禁煙は続いている。Q&A形式のサイトで調べたところ、その社長が現在までにたばこに費やした金額は500万円を超えていたようだ。良かった、俺非喫煙者で。
　先日の新年会で食した白子の天ぷらはたいへん美味であった。そもそも俺が白子好きとなったきかっけは、白子売りのずるい少年から嘘の身の上話を聞いておいおい声をあげて泣き、白子を全部買い占めて家へ持って帰ったところあい子さん（母）に叱られ、三日のあいだ朝昼晩、白子ばかり食べさせられて胃痙攣を起したのがはじまりだった。
　せっかく早めに帰宅しても大相撲の初場所が終わっちゃったからつまらないよ。
　…人と言う名の生き物に人気の高いこの星は、今となりゃ宇宙のあくた