転ばぬ先の杖

 祖父の命日が近いので、墓参りをしてきた。俺がBMWに乗せてもらえるのは、墓参りへ行くときぐらいである。
 ベストとかカーディガンとか、ニット製品を買いに走った。冬将軍に襲われたときの備えは前もってしておきたい。アリのような人生はまっぴらだが、キリギリスにもなりたくはない。寒いのは苦手だ。なんまいだあ、なんまいだあ、まっぴらまっぴらまっぴらだあ。
 今使っているコンパクトなストレート型ケータイを非常に気に入っているが、ボタンがむき出しなので問題もある。キーロックをかけ忘れてズボンのポケットに入れたりしたら誤作動しまくりでもう大変だ。勝手に電話帳を編集しようとしたり、突然上司に電話かけたり、意味もなくアラームセットしたりと、ひょっとして意思を持っているんじゃないかと疑うほどである。先日などは、ズボンのポケットの中身を人知れずカメラ撮影していた。おまいはあほか。
 アウトドア系のショップを徘徊していたら、プチマダム風の見知らぬ女性に話しかけられた。「え? あ、はあ」とドギマギ受け答えをしていたら、その人、見知らぬ女性じゃなくて高校のときの先生だった。俺かあほは。
 …誰が笑っていて、誰かは泣いていて、建てて壊して、例えばどこかで曲がって、また戻って。それが魔法というものなら、どれだけ信じれるだろう。それで時計が止まるんなら、それだけが人を動かすのなら、それでもまだそう言うのなら