眼球の状態は良いとの診断

 高嶋政伸のきな臭い演技は、どう見ても月9向きではない。6チャンネルへ帰って、ホテルの宿泊客に365日間謝っていてください。
 半年振りにコンタクト外来を受信した。薄暗い診察室で俺の眼を診察する医者について、サイドの髪の毛とトップの髪の毛の質が違い、白髪の混ざり具合もサイドとトップでは差がありすぎる。急遽、ヅラ疑惑が浮上した。薄暗い診察室だし、視力の悪い患者が相手だと思ってうまく誤魔化したつもりかもしれないが、俺の目だけはごまかせない。視力は悪くても、ヅラと非ヅラを見分ける能力は人並みはずれているのだ。この情報、信頼度90%。
 会社の周囲にスズメバチが発生した。巣を見つけて根絶やしにしたいところだが、見つけられないのでトラップを仕掛けた。トラップの内容は、砂糖と酢と酒とを混ぜたもの。これが発酵して漂う臭いにスズメバチが引っかかるという仕掛け。このトラップを、親方は「やまたのおろち退治みたいだ」と言った。たしかに、酒を使って化け物を退治するという意味ではやまたのおろちの昔話とソックリである。仕事ばっかりしていると思うとそうやって鋭い比喩をしやがる。本当に腹が立つぜ。
 通称"福島のマハダビキア"のブログでは、5割を軽く超える確率で酒にまつわるエピソードが語られており、それも生半可な内容ではないのだ。彼は姿かたちは人間だが、その正体は酒天童子酒呑童子)なのだと思った。物語に登場する酒天童子は"神便鬼毒酒"という酒を飲まされて眠り、眠っている間に首を刎ねられてしまうのだが、彼の場合は神便鬼毒酒を飲んでも眠らずになお勢いを増すものと思われる。
 運転していて右折レーンへ入ったら、直進車線で俺の隣に軽トラが並んだ。俺はチリヌルヲワカのCDを聴いていたが、軽トラを運転していたおっさんがこちらをちらちら見るなり体を妙ちくりんに動かすのだ。どうやら、チリヌルヲワカに合わせてノッているつもりらしい。ニヤけながらノるおっさん。そのノり方がまことに癪にさわる動きだった。背筋をまん丸にして首はちじこまり、ゴリラの求愛でも見せられている気分だ。
 なんだかんだ言っても駅周辺は活気があって楽しい。工事の理由が不条理。3車線なのに1車線。喫茶店のかわりに増えるカフェ。俺でもやれそうじゃん、店長。頭ん中でシミュレーション。おしぼり、灰皿、お冷、おつり、アジア麺、ナシゴレンパクチー…。10時の方向にロケバス風。映画か何かの撮影中? ニヤけて指差す野次馬たち。クレーンで吊られた原徹夫。
 行き着けの回転すし店は回転すしのレベルを大きく上回っている。あそこの店長、いずれは独立するのかな。髪を切った俺のことをワイルドになったって言うじゃない。とんでもない、ソフトな当たりが売りですから。
 …交わした温もりなんて思い出せないだろう。歩いた道程なんて振り返らないだろう。伸ばす手を振りほどく。そんな夢ばかりだって、こうしていれば通り過ぎてゆくだけ