上京物語

 日本にはフーリガンはいないと思っていたが、阪神タイガースのファンを見て、あれはある意味フーリガンだと思った。人形と言う人形は屋内へ撤去され、信号機には有刺鉄線が巻かれ、道頓堀川にかかるえびす橋は封鎖された。夢中になれるものがあるのは良いことだ。来年はもう少し熱心に楽天を応援してみようかな。
 棚倉村へ戻ってきてはや2日目だが、まだ東京の余韻にひたっている。頬を刺す朝の山手通りの余韻に浸っている。少なくとも年内にあと1回は上京しよう。
 仕事のほうは、月末ということもあり、他人がいかにもいい加減に書いた書類をひとつひとつ一言一句チェックする。頭が三角になりそうな作業だ。素晴らしき迷路に舞うメッセージが浮かんでは消えていくかのようだ。
 平成17年度も上半期が終わった。時の流れと空の色に何も望みはしない俺だが、素早く生きてゆっくり死ぬことを美学とする俺だが、月日が経過するのがますます早く感じる。時間の流れを早く感じるようになると、良い腕時計が欲しくなる。色々調べているが、パテック・フィリップヴァシュロン・コンスタンタン、オーデマ・ピゲといういわゆる3大腕時計はやっぱり素晴らしい。腕時計の歴史を1世紀早めたと称されるブレゲも相当良い感じだ。それらを調べあげたところで、俺の申し訳程度のサラリーで買えるわけもないのだが。
 通称"二本松のパク・チソン"は、田島祇園祭の七行器(ななほかい)行列を見に行くのを楽しみにしていたが、腹を壊してその願いが潰えてしまった。そのショックなのかどうかは知らないが、自分を客観視できなくなって専ら家に引きこもっている。捨てるのに胸が痛んでとっておいたケーキを結局腐らせて捨ててしまうような、そんな性格に一層磨きをかけてしまった。しゃべることもつじつまが合っておらず、ショックの大きさにただただ気の毒に思う。このまま俺の踏み石で終わるには惜しすぎる男だ。もう一度空へ舞い上がってほしいと、切に願う。
 …喜ばせたいんだ、君を心から。楽しませたいんだ、心の中じゃ。ほら俺のギンギンの赤茶色のギター