ステューシーのばーかばーか

1月の収支を黒字にするべく、鼻息を荒げて大人数でスロットを打ち行った。自称"二本松の牛若丸"は、例によって大河ドラマの時間に合わせて逃げるように帰っていった。得意の「トンズラ」である。通称"原町のモリエンテス"は、新基準のパチンコで大きな勝ちをもぎとった。彼は"バカハゲ"の異名をもつ友人を連れていた。たしかに髪の毛は少なかったが口数も異様に少なく、バカか否かを判断するまでには至らなかった。"八山田の泥ナマズ"は、海物語で善戦はしたものの掴みかけた勝ち星を寸前で逃してしまった。この日の彼の海物語は、悲しくも自作自演の泥物語と化してしまったのだ。俺は宮本武蔵をプレイし、夢想権之助を数回ぶっ倒したが吉岡清十郎や宍戸梅軒には太刀筋を見切られた。黄門ちゃまはスロットのくせに確率変動システムを搭載しているところがいじらしい。楽しかったがついにボーナスにはお目にかかることは叶わなかった。肩を落とした帰り道、ステューシーのニットキャップをパチンコ店に忘れたことに気付いて取りに戻ったところ、ハクション大魔王に誘惑されて傷口を倍に広げてしまった。無念。
内野聖陽は、声だけを聞いていると西村雅彦みたいだ。俺以外の女たらしはこの世から死滅すべきだ。
カー・ショップへ行ったら、ヌーノ・ベッテンコートのファンを名乗る店員さんがとんでもない技でエレキを弾いていた。そこの社長さんが「こいつはテクニックもさることながらセンスもいいんだ。それにライトハンド奏法には一家言持っているんだぜ」と言うだけあってエディ・ヴァン・ヘイレンばりのテクも披露していた。月曜日からとんでもないものを見てしまった。
仕事のほうはますますフェイド・アウト状態。書類を作成して然るべきところへ持ち込んだ後などは、他人の糞を巣まで運び終えた後のフンコロガシのような晴れ晴れとした気分になる。
スロットで勝ちたいという気持ちと負けたくないという気持ちが同じベクトルを向いたとき、俺は大敗を喫する。俺っちゅう"太陽を掴んでしまった男"は、太陽から手を離したくはなかったんだろうね。給料日はまだか? 冷めかけたスパゲティをフォークに巻きつけては、甘い憂鬱を噛み締める。
…何にでも甘酸っぱいレモン・フレイヴァー。俺のタンクもスマイルで錆びちまった。