静けさや、夜にしみ入る、鬼の声

佐村河内守氏

 聴力障害にも屈しない類い稀なる作曲センスと、怪しい風貌から"現代のベートーベン"と称された佐村河内守氏だが、「曲を作っていたのは自分だ」と作曲家の新垣隆氏に暴露された。しかも、聴力障害というのも疑問だという。
 カリスマ作曲家のゴーストライター騒動には当然のようにマスコミが飛びついて、ついに佐村河内氏本人が釈明会見を行う運びになった。会見が佐村河内氏のプラスに働くとも思えないが、新垣氏の主張や週刊誌に書かれていることを一部否定したかったのだろう。会見の中で佐村河内氏は「新垣さんが、なぜこのタイミングで暴露したのかわからない」と言っていた。
 俺も、なぜこのタイミングなのか考えてみたんだけど、NHK朝の連ドラ「あまちゃん」が原因なんじゃないかと思った。大女優鈴鹿ひろ美の大ヒット曲「潮騒のメモリー」を歌っているのは、実は主人公天野アキの母親天野春子だった、というのが「あまちゃん」のストーリーの根幹のひとつである。ゴーストシンガーをめぐる後悔、怨恨、葛藤、嫉妬が物語の中盤に展開されるわけだが、それを見た新垣氏に何か感じるものがあって、今般の暴露に至ったのではないかと思った。
 ところで、プレステのヒット作「鬼武者」のゲーム音楽も、佐村河内氏の名前がクレジットされたもので、リリース当時は俺もハマったんだけど、ことBGMに関しては全く印象に残っていない。これは、音楽のデキそのものというより、夜中に、息を殺してひっそりゲームを楽しむというのが、俺のプレイスタイルだったことにほかならない。
 …必ず人は、パンドラの箱を開けるぜ。禿鷹に、肝臓啄まれたって。だけど今一度、ここで逆手のエンターテインメント。“Sock it to me”のフレーズだって、神の無礼講