さよなら人類

 年末にチェックしておきたかった番組は、M−1グランプリイカ天2007復活祭のふたつである。イカ天のほうは名物バンドの同窓会的な作りになってしまうのではないかと心配していたが、順を追って歴代のイカ天キングをしっかり紹介してくれたので概ね満足だった。たまの登場をピークに(その後、ブランキー・ジェット・シティが登場するものの)尻すぼみになっていくわけだけだが、俺が今でも愛聴しているのは人間椅子ブランキー・ジェット・シティぐらいである。一応俺のCD棚にはスイマーズとか大島渚とか宮尾すすむと日本の社長あたりもコレクションされているが、かれこれ5年以上聴いていないし、スイマーズに至っては、(別に金に困っているわけではないが)売ってしまおうとさえ思っている。
 今や耳が肥えて、真心ブラザーズが新作をリリースしても"名作「キング・オブ・ロック」以降はその輝きを失う一方だ"などと偉そうに言ってみたり、LOVE PSYCHEDELICOのことを"良いことは良いがシェリル・クロウを超えることはないだろう"と毒づいてみたり、ドリカムの中期の曲を"所詮ドナ・サマーの模倣でしかない"と知ったかぶりしてみたりしているが、当時は何しろ氷室京介しか知らなかったから俺の耳は童貞と言っても過言ではなかった。なので、今日改めてイカ天を見てみると新たな発見がとても多い。あの時代の若者はバンドを組んでメジャーデビューすることを目指していたが、今の若者はお笑いコンビを組んでM−1で優勝することを目指している。それもいいだろう。稀にどっちつかずで波多陽区とかはなわみたいなミュージシャン芸人もいるが、それもいいだろう。小島よしおにはパンクスピリッツを感じるし、芸人としてはもったいないぐらいのリズム感を持っている。
 動画は、人間椅子の名曲「りんごの泪」。ギブソンSG独特の音色が奏でる印象的なリフ、物悲しいメロディ、深い詩、中ほどで突如変化する曲調、スリリングなユニゾンプレイ。彼らはアマチュア時代からこんなすごい曲を作っていたのだ。

 番組総ぐるみでたまを絶賛するのは良いが、人間椅子ブランキー・ジェット・シティはもっと褒められて良いんじゃないかな。さよなら2007。さよなら人類。
 …ママ、俺は今、神様と肩を並べた。本当なんだ。まだ、子供の頃のことを思い出せる