白い蛇と灯台−後編−

 地元北海道と積極的に関わりをもつことで観客動員数を増やした日本ハムファイターズの北海道移転は成功だったと言える。リーグ優勝を決めた際のヒルマン監督の「シンジラレナーイ」というマヌケな第一声は失敗だったと言える。無理してまで日本語使わなくてもねえ。ちなみにあい子さん(母)は、新庄剛志亀田興毅井手らっきょが嫌いみたいだ。
 サッカーでは、一人の選手が複数のポジションをこなす多様性みたいなことを"ポリバレント"と言う。オシム監督がこの"ポリバレント"という言葉を使うと、"入歯にポリデント"の間違いじゃないかと思ってしまう。
 髪を短くした俺は津々浦々で評判が良い。回転寿司屋のレジの女性は「あらお兄さん、なんだかアタマが格好良くなったわね。今日は格好良いからハンコ一つおまけしちゃう」と、ポイントカードに一つ多くポイントをつけてくれた。
 会議とか研修会といえば、今まではアホ面で居眠りしながら聞くともなく聞いていれば良かったが、異動した今年度から講師的立場になってしまったから大変だ。小心者なだけに念には念を入れて準備していた傍ら、中ボスは秋華賞の予想に興じていた。「ん!大体決まったぞ!!!」と元気よく口走ったかと思ったら、出走表のコピーをとり始めた。"経費節減"や"エコロジー"など、中ボスにとってはどこ吹く風である。そして半ば強制的に「はい500円」などと集金をはじめ、社員数名を自分の予想に乗らせるのだった。今回は相当自信があるようだ。
 近隣の支店へ声をかけて参加者を募り、飲み会が行なわれた。どこが面白いのか分からないが、「腹と俺は同期だけど…俺は動悸息切れだから」と中ボスが得意の自虐ギャグを炸裂させていた。それを3回も聞かせれた時は、なるべく早く息切れしてくれって思った。支店には俺のファンの子もいるようで、自ら進んで俺に書類を届けたがったりするらしい。だいたい30歳になった俺だが、フェロモンはまだ枯れていない。うまい酒だった。
 …午後3時のおやつはもう売り切れた。冴えない笑顔は、君の優しい証拠