笑う一寸法師

 アヤパンがトリノへ行っているため、中野美奈子アナがめざましテレビのMCをつとめている。棒読みの占いがたまらない。当たる気がしないぜ。
 オーディオCDを全く読まなくなってしまった俺のカーオーディオは、結局入院することになった。覚悟はしていたが、ラジオすら聞けない車の運転なんて、退屈そのものである。山手線をぐるぐる回るだけの運転手はもっと退屈なんだろうなあ。
 会社にて。用事があってA室へ行こうとしたら、親方に呼び止められてどこへ行くのか聞かれた。A室ですが、と答えたら「じゃあ、これB室まで届けてくれる?」と頼まれた。A室とB室は別の棟にあり距離もそれなりに離れれている。「じゃあ」の意味が全くわからないんですけど。
 カート・コバーンは、ステージで楽しんでもいないのに楽しんでいるかのように振舞うことに嫌気がさして自ら命を絶った。多くの人間にとって“死”は受動的に受け入れるしかないものだが、カート・コバーンはそれを“生”の内に能動的に組み入れ、有効利用したのである。そこいらの中高生が自殺するのと、カート・コバーンの死とを一緒くたに考えるのは大間違いだ。
 ネクタイを締めてスーツに袖を通した時の俺は、成功してからのカート・コバーンとよく似ている。口では「はい、そうですね」とか「おっしゃるとおりです」などと言いつつ、脳みそは真逆のことを考えるんだ。ある日、歪んだ流し台のステンレスを鏡がわりにして、ふいにおのれの顔を映し出してみたんだ。悪魔以上に恐ろしい姿をしていたよ。俺は頭が良すぎるうえに性格がひん曲がっているから異論や反論が頭の中に常に氾濫してしまうんだ。なのに表面上は素直で聞き分けの良い人間のように振舞ってしまう。たまに罪悪感に押しつぶされそうになる。
 …戦慄の狂った季節を知らす蝉たちの調べ。ああユメかウツツか、脳が切り開く路