天才は転がり続ける

 帰宅して光子さん(祖母)と大相撲中継を見たが、朝青龍が負けて座布団が飛びまくっていた。相撲ファンが興奮すると座布団を投げるのはなぜだろう。初場所も大詰めなので、できることなら休暇をもらって序二段の取り組みぐらいからBSでテレビ観戦したい。一度、デーモン小暮閣下(大の相撲ファン)と相撲について語ってみたいと思っている。
 職場のボスは女性だが、とても気丈な人だ。先日、用があって唐突にボスの部屋に入ったら、こっそり大福を食べていた。ちょうど3分の2ほど口に放り込んだところだったが、俺が突然入室したもんだからビックリして口から引っ張り出して机に戻していた。気丈だが甘いものを好むあたりはやはり女性なんだなあと思って少し安心した。
 対面の席のプロゴルファー猿みたいな顔の人は、極端に対人関係が苦手で、会話すらもどこかたどたどしい。だがガンダムが大好きで、ガンダムの話題を振ってあげたときだけは少年のように瞳が輝くのだった。「シャア専用のノートパソコンがあるの知ってました?」って聞いたら大喜びして「シャア専用っていうことは処理速度も普通のパソコンの3倍なのかなあ!!」とかなんとかはしゃいでいた。シャア専用の処理速度はいいから、おまいの朝の支度の処理速度を早めろよ、毎日遅刻してんじゃねえよ、とか思った。
 堀江貴文さんは極端に首が短い。というか、無い。どこかに落としたのかも知れないから昨日も今日も堀江さんの首を探してあげてたんだ。職場の親方は、大真面目に仕事の話をしているときに「つまりこれは想定内なの? 想定外なの?」と聞いてきやがった。救いようがないほどケツの穴ルが小さくて、能動的な仕事が一切できないどうしようもない人だけれど、俺はなるべくこの人の良いところを見てあげようと努力してきたんだ。少ない長所を伸ばしてあげようと思っていたんだ。でも、今日と言う今日は「この人バカなんだわ、ホンモノの」と思ってしまった。ホリエモンとの共通点は首がないことだけじゃないか。
 ギターでも買って、あとちょっとで仕事を辞めようと思う。俺は音楽で飯を喰っていくんだ。そろそろ親にも「仕事辞めてプロのミュージシャンになるから」って言うつもり。天才は転がり続ける。だが大衆は自ら転がろうとはしない。俺と一緒に転がれない奴は二度と俺に近寄るな。ジョン・レノンカート・コバーンジャニス・ジョップリンジム・モリスン…。天才は得るものも大きいが、そのかわり失うものも大きい。そういうことだ。
 …赤と青に走る脈のように繋がれていた。ひとつに向かっていくつもりだった。左胸の奥に繋がる灯火があれば、すれ違いざまに見る不安などない