徹夫の動く城

安心してゴルフすらラウンドできないご時世ですか。尾崎三兄弟と宮里三兄弟にアイアンの角で滅多打ちにしてもらえばいいよ、あんな人は。
俺が処理した、千件は軽く超えるであろう書類の中から20件を抜き出して調べるのが先日の監査じみたものであった。いわばロシアン・ルーレットのようなものだが、敵もなかなか鋭い嗅覚をもっており、決して無作為に20件を選ぶのではない。「これはいかにも臭そうだ」という弾丸ばかり20件抽出してマガジンに装填しやがるから大変だ。俺はマトリックスにおけるキアヌ・リーブスの如きスウェーで巧みにかわしながら普段着のまま3時間をやり過ごしたのだ。イチロー選手が大記録について語った、「小さいことの積み重ねがとんでもないことにつながる」ってのは、きっとこのことだな、と思った。
車検証が必要になり、車内を探したが見つからない。俺のシエンタちゃん(通称:ムッソリーニ)の内装は、忍者屋敷並みに収納スペースが設けられており、オーナーの俺でさえ開けたことのない場所に隠れていた。その神秘的な不思議空間は、ハウルの動く城を想起させる。オイルをマメに換えているせいか、カルシファーにあたる部分は非常に調子が良い。
時間は欲しいけど、いざ「自由」って言われると、何していいかわからない。命令されたい、縛られたい。「自由」が苦手な、切ない人間。
…やがてスコールは降りやんで、鳥たちはまた飛んだ。うすいビールを飲み干して、鳥たちはまた飛んだ